夏の行楽シーズンを迎え、空の旅を計画する際にどのようにして航空会社を選んだら良いのか、利用者は迷うことも多いだろう。安全性を第一に選ぶのか、サービスや運賃を優先させるのか——。人それぞれだが、毎年のように格付け会社が発表する「エアラインランキング」をそのまま信用すると思わぬ失敗につながるので要注意だ。定時に到着しなかったり、サービスが悪かったりする程度ならまだしも、場合によっては命にかかわる事態にもなりかねない。そこで今回は各種「エアラインランキング」の実態に迫ることにしたい。
(杉江 弘:航空評論家、元日本航空機長)
ランキングの基準やデータの取り方は科学的なのか?
航空会社の安全性、定時性それにサービスなどを採点してランキング形式で発表する格付けは英国の調査会社「スカイトラックス」によるものから、オーストラリアの「Airline Rating」、ドイツの「JACDEC(Jet Airliner Crash Data Evaluation Centre)」、それに米国の「エア・トランスポート・ワールド(ATW)」のものなどいくつもある。
我が国ではニューズウィーク日本版やダイヤモンド社など数社の雑誌が同様の発表をしている。
格付け会社が発表する「エアラインランキング」が調査対象とする航空会社は約350社(世界全体では約1000社ある)ほどで、ランキングされるのはベスト20社とワースト20社というのが一般的だ。
ランキングの内容は安全性、定時性、サービスが中心であるが、近年は空港のランキングも加わっている。それぞれの評価基準は格付け会社が独自で収集・分析したデータによるものと、顧客へのアンケートから得られる満足度によるものがある。
結論を言うと、空港ランキングは空港の規模や利用者数さらに利用者の意見などから決められていて特に問題にする必要はないが、従来から評価対象となっている航空会社の安全性、定時性、サービス面でのランキングを決定する基準やデータのとり方は科学的でないものが多い。
以下で順にその理由を述べてみたい。なお、最近、スカイトラックス社は航空会社の総合評価を顧客からの満足度で決定しているが、これでは専門性を欠き、利用者に誤解を与えかねないと筆者は考えている。