6月11日にロシアの完全国産旅客機「SJ-100」の飛行試験が始まったと報道された。ロシアは経済制裁に対抗するため、完全なる国産旅客機の開発を進めている。
ロシアが運航する旅客機は、頭数で約85%がボーイングやエアバスなどの輸入旅客機だ。これらの輸入旅客機は経済制裁で整備が困難になっている。
いずれ飛行不能になる。代わりに国産旅客機を投入し、ロシアは航空路を維持するつもりだ。
国産旅客機の生産計画が失敗すれば、輸送力減少に歯止めがかからず全滅に向かう。ロシアの航空路の生き残りは、国産旅客機プロジェクトの成否にかかっている。
しかし、現状を見る限りロシアの国産旅客機生産の見通しは厳しい。このままでは、10年以内にロシアは航空輸送を維持できなくなる可能性が高い。
エネルギー価格高騰により、確かにロシアの経済指標は悪くないかもしれない。しかし、表面に見えない部分で着実に体質の悪化が進行している。航空輸送はその一例である。
欧米に依存していたロシアの空
ソ連時代、ロシアは航空大国であった。現在でも、ロシアは独自の旅客機や戦闘機を開発し、生産している。確かにロシアの航空産業は米国・欧州に次いで有力である。
しかし、ロシアの航空産業はトップを争っている米国・欧州と比較すると、圧倒的に劣勢だ。
エアバス社、ボーイング社は最盛期にはそれぞれ年間800機以上の旅客機を生産した。一方、ロシアではソ連崩壊後の旅客機の最大生産数は年間44機である。
生産した旅客機のサイズも考慮すれば、生産の規模の差はさらに開く。
ソ連の開発した旅客機は、ソ連崩壊の時点ですでに時代遅れであった。1990年代以降、ロシアの航空会社はエアバス機やボーイング機を導入していった。
2022年のウクライナ戦争開戦時には、ロシアの航空大手5社の旅客機数の約85%がこれら輸入旅客機となっていた。輸入旅客機の方が大型であり、輸送力では9割以上を海外に依存していた。