2022年11月に新潟空港に到着したトキエアの初号機(写真:共同通信社)2022年11月に新潟空港に到着したトキエアの初号機(写真:共同通信社)

2024年1月31日、新しい航空会社としてトキエア(新潟市)が新潟を拠点にして就航する。ANAやJALの系列に属さないベンチャー航空会社としては、フジドリームエアラインズ(FDA、静岡市)以来、約14年ぶりの開業となる。果たして今後順調に成長してゆくのか、課題も含めて検討してみたい。

(杉江 弘:航空評論家、元日本航空機長)

新潟—丘珠に続く2路線目には新潟—仙台を予定

 まず、トキエアの立ち位置だが、地域航空なのか、LCC(格安航空会社)なのか。

 トキエアは山陰、北陸それに東北地方全体をも含めた地域で生まれた初めての航空会社だ。新潟県から11億6000万円の融資をはじめ大光銀行など県内の複数の金融機関からも融資を受け、第四北越銀行も検討していると報道されている。拠点となる新潟は、産業や観光における日本海側の中心都市で、目と鼻の先には世界文化遺産に推薦中の佐渡もある。

 同様の例として、九州の熊本と天草を拠点として運航している天草エアラインがある。同社は本社を天草に置き、天草から熊本、福岡を結び、近年では1機体制ながら熊本からさらに伊丹へと路線を伸ばしているが、他のいくつかの会社のように地域航空と見なされている。その意味ではトキエアも天草エアラインと良く似ているので地域航空と言っても間違いではないだろう。

 しかし、路線計画を見ると、最初の新潟—丘珠(札幌)路線から2路線目として4月頃に新潟—仙台線を予定している。その次には神戸、中部(名古屋)の路線開設を目指しており、使用機材も当初から2機体制で今後はさらに増やす計画だ。

 そのような運航計画を見ると、地域航空というよりも全国の多くの中心都市へと展開するLCCというイメージの方が強い。航空雑誌の「月刊エアライン」でもトキエアをすでにLCCのカテゴリーに入れている。

 この点について当のトキエアは「ビジネスモデルとしてはLCCに該当するが、低運賃で高品質なサービスを提供するハイブリッド航空を目指している」と述べている。もっとも、既存のLCCや新興航空会社が自身のカテゴリーについては明確にすることは少なく、LCCかどうかはもっぱらユーザーやメディアなどが決めている。そのためトキエアのカテゴリーについても運航実態を踏まえていずれ一定のところに落ち着くと思われる。

2023年11月29日の記者会見で就航日を発表したトキエアの長谷川政樹社長(写真:共同通信社)2023年11月29日の記者会見で就航日を発表したトキエアの長谷川政樹社長(写真:共同通信社)

使用するATR機は燃費の良いターボプロップ機

 トキエアで使用される機材はフランスとイタリアで共同開発されたATR機。開業当初はATR72-600(72人乗り)2機で、今後、ATR42-600(46人乗り)4機の導入も予定している。

 ATR機は燃費の良いターボプロップ機で、国内他社でもボンバルディア機からの更新機材として実積がある。特にATR42-600は、約1000メートルと比較的短い滑走路でも離発着できる性能を持ち、これは来年秋頃に予定している佐渡空港への乗り入れを考慮したものである。