(杉江 弘:航空評論家、元日本航空機長)
考えられる原因は2つ
1月2日午後5時47分ごろ、羽田空港のC滑走路に着陸しようとしたJAL516便(新千歳空港発)が、滑走路上にいた海上保安庁の小型機と衝突して両機とも炎上した。海保機の乗員は脱出して重傷だった機長を除く5人が死亡、JAL機は乗員・乗客379人が脱出したものの、17人が脱出時に怪我をした。
これまで得られている情報から事故発生の経緯をまとめると、以下のようになる。羽田空港のC滑走路の海側端から少し北側のC-5誘導路から滑走路に進入し、離陸しようとしていた海保のボンバルディア機に対し、千葉県側から侵入していたJALのA-350が着陸操作を行った。しかし、JAL機のパイロットは、滑走路端から約300メートル北側に海保機がいたことに気がつかなかったものとみられている。
衝突の原因は2つ考えられる(編集部注:原稿執筆時点=1月3日正午時点の情報を基にしている)。
1つは、管制官がJAL機の着陸の直前に海保機に離陸の許可を出したものの、何らかの理由で離陸滑走が遅れ、そこにJAL機が追いつく形で衝突した可能性だ。2つ目は、管制官が、海保機側に誘道路から滑走路に入る手前の停止線で停止する指示を出していたにもかかわらず、進入許可を得たものと思い込んで進入していた可能性である。
いずれにしても、滑走路上に離陸しようとしていた海保機にJAL機のパイロット2人が気がついて、着陸をやり直し(ゴーアラウンド)していれば、事故にはならなかった。
「パイロットは通常通りの着陸操作」とJAL幹部
だが、この点に関して、2日夜遅くに会見したJALの幹部は、「パイロットは正常に進入して通常通りの着陸操作を開始したところ衝撃があった」と発言している。つまり、パイロットは通常通りの操作を行っていたというのだ。それが事実なら、JALのパイロットは着陸灯を点灯させながら最後まで海保の存在に気がつかなかった可能性がある。
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