フランスでは総選挙の結果、極右政党・国民連合が第3勢力に(写真:ロイター/アフロ)

ヨーロッパを代表する2つの国、英国とフランスで総選挙が行われ、いずれも左派が議席を大きく伸ばしました。英国では労働党政権が発足しています。近年、両国だけでなく欧州全体で右派の伸長が目立っていただけに、「意外な結果」との受け止めが多いようです。いま、欧州で何が起きているのでしょうか。やさしく解説します。

西村卓也:フリーランス記者、フロントラインプレス

英国では保守党政権への不満が噴出

 英国は日本と同様、議会の信任を受けて内閣が存立する議院内閣制をとっており、首相に下院の解散権が与えられています。解散権行使には一定の制約があるものの、保守党のスナク前首相は2025年の議員任期満了を待たずにこの5月、解散・総選挙を表明しました。

 ところが、7月4日に行われた総選挙では保守党が大敗し、労働党が大きく躍進しました。定数650の下院で、労働党は211議席増やして412議席の単独過半数を獲得。14年ぶりの政権交代を実現させてスターマー党首が新首相に就任したのです。保守党は251議席減らして121議席に後退しました。

英国では労働党が圧勝した(写真:REX/アフロ)

 保守党の敗因はこれまで積み重なった政権に対する国民の不満を解消できなかったことにあります。2016年の国民投票で欧州連合(EU)離脱が決まり、2020年に離脱したものの、経済は思うように上向きませんでした。

 ジョンソン元首相が新型コロナの規制を破って官邸でパーティーを開いていたことも保守党への嫌気を増幅しました。今回は経済指標が比較的良かったタイミングで解散に踏み切ったものの、保守党への逆風は予想以上で、現職閣僚や元首相らが軒並み落選しました。批判票の多くは二大政党政治の対抗勢力である労働党に流れたのです。

 今回の総選挙で見逃せないのは右派ポピュリストのファラージ党首率いる「リフォームUK(英国改革党)」の躍進です。

 得票率に目を向けるとよく分かります。保守党の得票率は前回2019年12月の総選挙から20ポイント減らして24%にとどまりました。これに対し改革党は、前回(前身の「ブレグジット党」)の2%から14%に急伸。獲得議席はわずか5でしたが、いずれも前回保守党が制した選挙区です。右派の新興勢力が一定程度保守党の票を食った形です。

 また第3の党である自由民主党は、勝つ見込みの高い選挙区に注力する選挙戦術が奏功して保守党の議席を奪い、63議席増の71議席を獲得し、復活をアピールしました。労働党は得票率が前回選挙とあまり差がないので、保守党の基盤を侵食したとは言えないでしょう。