7月4日に実施されたイギリスの総選挙は、予想通り保守党が大敗し、政権が労働党に移った。7月7日の日本の都知事選も、事前の世論調査のように現職の小池百合子が3選を果たしたが、石丸伸二が蓮舫より多く得票し、2位に躍り出た。それは意外な結果であった。
そして、7月7日に行われたフランスの国民議会選挙の決選投票では、予想に反して、極右の国民戦線(RN)ではなく、左翼連合(新人民戦線NFP)が第1党になり、マクロン大統領の与党連合が2位で、RNは3位に沈んだ。
先進民主主義国の選挙とは、開票するまで何が起こるか分からない。とくにフランスでは、予想外の結果にカオス状態が生まれている。
決選投票の結果
フランス国民議会(定数577)の選挙は2回投票制であるが、6月30日に行われた第1回投票では、極右のRNとそれに連携する勢力が33.2%で首位、左翼連合のNFPが28.0%、マクロンの与党連合が20.8%で3位であった。RNの得票数は1000万を超えており、297選挙区でトップに立った。
そのため、決選投票ではRNが第1党となる、そして、場合によっては議席の過半数を占めるという予測となった。RNのバルデラ党首は、「過半数を獲得すれば首相に就任する」とまで述べていた。
フランスの選挙の仕組みでは、第1回目の投票で有効投票の過半数かつ登録有権者の4分の1以上の票を得た候補がいない場合、決選投票が行われることになっている。エントリーできるのは、登録有権者の8分の1以上を得た候補者である。ただし、この条件を満たす候補が誰もいないか、1人しかいない場合は、上位2者による決選投票となる。
今回、1回目で当選したのは、RNが39人、左翼連合が32人、与党連合は4人であった。501選挙区で決選投票が行われたが、決選投票で3人が残った選挙区は306にものぼったが、その306の選挙区で、与党連合がトップで当選したのは70選挙区のみであった。
この結果を受けて、与党連合と左翼連合は、「RNの勝利阻止」を最優先課題として、RNが一位だった選挙区では3位以下の候補者が立候補を取り下げるという手を使った。それは200以上の選挙区にのぼり、左翼連合の132人、与党連合の83人が撤退した。
この結果、候補者が2人のみとなった選挙区は190区から410区に増えた。この与党連合と左派連合の協力によって、決選投票直前の世論調査では、RNは175〜205議席、左翼連合は145〜175議席、与党連合は118〜148議席を獲得すると予想された。RNが第1党になるのは間違いないが、過半数には届かないという見立てであった。
ところが、決選投票の結果は、1位が左翼連合で182(+33)議席、2位が与党連合で168(−82)議席、3位がRNで143(+55)議席となった。世論調査も大きく外れたのであり、この結果は、フランスでも世界でも大きな驚きで迎えられた。