7月11日、ワシントンで開催されたNATO創設75周年記念首脳会議に際して記者会見するフランスのマクロン大統領(写真:ロイター/アフロ)

 7月4日に実施されたイギリスの総選挙は、予想通り保守党が大敗し、政権が労働党に移った。7月7日の日本の都知事選も、事前の世論調査のように現職の小池百合子が3選を果たしたが、石丸伸二が蓮舫より多く得票し、2位に躍り出た。それは意外な結果であった。

 そして、7月7日に行われたフランスの国民議会選挙の決選投票では、予想に反して、極右の国民戦線(RN)ではなく、左翼連合(新人民戦線NFP)が第1党になり、マクロン大統領の与党連合が2位で、RNは3位に沈んだ。

 先進民主主義国の選挙とは、開票するまで何が起こるか分からない。とくにフランスでは、予想外の結果にカオス状態が生まれている。

決選投票の結果

 フランス国民議会(定数577)の選挙は2回投票制であるが、6月30日に行われた第1回投票では、極右のRNとそれに連携する勢力が33.2%で首位、左翼連合のNFPが28.0%、マクロンの与党連合が20.8%で3位であった。RNの得票数は1000万を超えており、297選挙区でトップに立った。

 そのため、決選投票ではRNが第1党となる、そして、場合によっては議席の過半数を占めるという予測となった。RNのバルデラ党首は、「過半数を獲得すれば首相に就任する」とまで述べていた。

 フランスの選挙の仕組みでは、第1回目の投票で有効投票の過半数かつ登録有権者の4分の1以上の票を得た候補がいない場合、決選投票が行われることになっている。エントリーできるのは、登録有権者の8分の1以上を得た候補者である。ただし、この条件を満たす候補が誰もいないか、1人しかいない場合は、上位2者による決選投票となる。

 今回、1回目で当選したのは、RNが39人、左翼連合が32人、与党連合は4人であった。501選挙区で決選投票が行われたが、決選投票で3人が残った選挙区は306にものぼったが、その306の選挙区で、与党連合がトップで当選したのは70選挙区のみであった。

 この結果を受けて、与党連合と左翼連合は、「RNの勝利阻止」を最優先課題として、RNが一位だった選挙区では3位以下の候補者が立候補を取り下げるという手を使った。それは200以上の選挙区にのぼり、左翼連合の132人、与党連合の83人が撤退した。

 この結果、候補者が2人のみとなった選挙区は190区から410区に増えた。この与党連合と左派連合の協力によって、決選投票直前の世論調査では、RNは175〜205議席、左翼連合は145〜175議席、与党連合は118〜148議席を獲得すると予想された。RNが第1党になるのは間違いないが、過半数には届かないという見立てであった。

 ところが、決選投票の結果は、1位が左翼連合で182(+33)議席、2位が与党連合で168(−82)議席、3位がRNで143(+55)議席となった。世論調査も大きく外れたのであり、この結果は、フランスでも世界でも大きな驚きで迎えられた。