F-16戦闘機の供与とATACMSの射程制限を撤廃すればウクライナ軍にとって戦況は有利に展開するはずだが・・・(写真は6月14日、オハイオ州コロンバス上空を飛ぶF-16戦闘機、米空軍のサイトより)

 2024年は早くも6か月が経過した。この間、ウクライナ軍は砲弾の不足のために厳しい戦いを強いられてきた。

 しかし、米国などからの弾薬・兵器の供与により防御の崩壊を免れることができた。やはり、戦争においては弾薬・兵器と兵站は不可欠な要素である。

 本稿においては、戦争開始以来2年4か月が経過した状況において、両軍の現状について考えてみることにする。

ロシア・ウクライナ戦争は膠着状態に

 ロシア・ウクライナ戦争の7月初旬の状況はどうなっているのか。

 一言で表現すると「膠着状態」である。つまり、ウクライナ軍もロシア軍も大勝利を期待できる状況にはなく、戦線は狭い範囲での一進一退の攻防を繰り広げていると状態だ。

 7月1日付のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、「ウクライナとロシアには死の夏が待ち受けている、大きな戦果をほとんど期待できず、戦闘部隊がほぼ静止した前線で突破口を模索する中、数千人が死亡する可能性が高い」という暗い予想を立てている。

 WSJの予測は外れていないと思う。それほどにウクライナ軍もロシア軍もこの戦争を遂行する上での大きな問題を抱えているからだ。

 ロシア軍は、特に東部戦線において主導権を握り、大きな犠牲を払いながらも攻勢を継続している。

 現在、ロシア軍が特に重視をしているのは、

①バフムト西側の要衝チャシウ・ヤール(Chasiv Yar)の奪取、その後のコンスタンチノフカ(Konstiantynivka)の奪取、

②オチェレティネ(Ocheretne)方向から攻撃してポクロウスク(Pokrovsk)の奪取である。

 最近注目されているのが、今まで静かだった正面トレツク(Toetsk)を目標とするロシア軍の攻撃だ。

 この攻撃はチャシウ・ヤール方向からの攻撃と連動してコンスタンチノフカを目指す包囲作戦の可能性がある(以上、図1参照)。

図1:ロシア軍が重視する東部戦線の要衝

出典:Ukraine Control Mapを基に渡部が作成

 しかし、ロシアの作戦が順調に行っているわけではない。

 ロシア軍が目指したのは、「米国等が供与した弾薬と武器が第一線のウクライナ軍に届く前に、激しい攻撃により決着を付ける」ということだった。

 しかし、その狙いは明らかに失敗している。

 ウクライナ軍に弾薬・武器が逐次届いている状況において、ウクライナ軍は最悪の状況を脱して頑強な抵抗を継続している。

 ロシア軍は非常に高い犠牲を払って攻撃したが、獲得した土地は限られている。その代表例がロシア軍のハルキウ正面における作戦の失敗である。