ロシアの国土は広大だが、実は現代の産業に必要な資源がすべて自前で調達できるわけではない(Peggy und Marco Lachmann-AnkeによるPixabayからの画像)

ドタバタと金属確保に乗り出すロシア

 EUの第14弾対ロシア制裁パッケージが成立した。ロシアへの輸出禁止品目にマンガン鉱石が追加された。

 ここで注目すべき点は、ロシアからマンガン鉱石を買うなというのではなく「売るな」と言っていることだ。

 ロシアは確かに資源大国だ。ロシア経済は資源が支える。広く共有された常識である。

 ロシアにおける資源の主役は石油・ガスだが、金属資源も豊富だ。金、プラチナ、パラジウム、ニッケル、バナジウム、銅、金と、ロシアは立派な鉱床を持つ。

 一方で、ロシアの天然資源環境省や地下資源庁は、「戦略的資源の確保が重要な課題だ」と言い続けている。

 これは日本のエネ庁ではなく、ロシアの地下資源庁の台詞である。

 資源大国ロシアらしからぬ発言には違和感を覚える方もいるだろう。しかし、実際にロシアでは一部の金属を海外に依存してきた。開戦で制裁が強化され、金属確保でもロシアは大いに焦っている。

ロシアが海外依存する金属資源

 一口に資源と括ってしまうが、化石燃料と金属では全く別モノである。また、何十種類もある金属は、種類によって事情が全く異なる。

 例えば、銅の資源が豊富でも、アルミニウムの資源が豊富とは限らない。銅の鉱床とアルミニウムの鉱床は、地質的に全く異なる。

 また、金属は種類が違うと性質も全く異なる。別の金属が代わりにならない場合も多い。

 例えば、銅もアルミニウムも導電性が高いので、電線の材料になる。一方で、アルミニウムは軽量材料になっても、比重が8.9もある銅は軽量材料にはならない。

 そのため「金属資源が豊富」という言葉は誤解を生みやすい。金属資源が豊富と言われる国でも、全種類の金属の資源が豊富なんてことはない。

 なお、日本については全滅に近い状況で金属資源が乏しいので、「金属資源に乏しい日本」という表現は正しい。

 実のところ、ロシアが海外に資源を依存していた金属は多い。むしろ、ロシアの金属資源に競争力がある場合が少ないくらいだ。