レアメタル産業へのロシアの熱意

 開戦前のロシアでは輸入代替がブームだった。石油・ガスを売り、自動車やハイテク製品を買う。これが、ロシア経済の基本スタイルであった。

 それではいけないと、政策的に工業製品の国産化を目指していた。これが輸入代替である。

 残念ながら、一部の例外を除きうまくいかなかった。しかし、開戦後は制裁が桁違いに強化され尻に火が付いた。

 輸入代替は「技術主権」と名を変えた。今までも主観的には本気だったかもしれないが、もっと本気にならざるを得なくなったのだ。

 前述のとおり、制裁で輸入不能になったのは、兵器部品や工作機械だけではない。

 ウクライナは2014年以降もロシアにチタン鉱石を売っていたが、開戦後は抜け道を完全に潰そうとしている(潰れてないという噂もある)。

 南米から輸入していたニオブやリチウムも輸入できなくなった。

 ロシアの優先順位は不明瞭だが、チタン、マンガン、ニオブ、レアアース、リチウムが金属確保の対象として頻繁に名前が挙がる。特に、レアアースとリチウムが熱い。

 技術主権政策では、輸入品をすべて国産化する方向で進めている。

 金属も国産化する。金属の国産化は、鉱山の採掘から製錬までのすべての工程に及ぶ。さらに、金属を加工し、最終製品にする技術も開発する。

 政府主導で次々とプロジェクトが立ち上がっている。

 製錬以降の工程はあっても鉱山がなかったチタンでは、前述のとおりチタン鉱山を開発している。

 マンガンの最大の用途であるフェロアロイの製造はロシアでできる。一方でマンガン鉱山がなかったので鉱山開発を推進してきた。

 レアアースではショボい鉱山があったが、製錬を最後までできなかった。そこで鉱山を近代化するとともに、レアアースを各元素まで分離できる製錬工場を立ち上げようとしている。

 さらに、磁石工場やモーター工場も計画している。

レアアース化合物

左から酸化イットリウム、炭酸テルビウム、炭酸エルビウム、酸化ホルミウム、酸化ディスプロシウム。レアアースは17種類の総称で、それぞれ用途や価値が異なる。鉱石には17種類の元素が混じって含まれるため、製錬工場で各元素に分離する必要がある。資料提供:サンクト社

 リチウムに至っては、鉱山も製錬工場もない。ロシアはコルモジョルスコエ・リチウム鉱床で鉱山と製錬工場の建設を進めている。

 さらに、ノリリスク・ニッケル社ではニッケル酸リチウムなどの電池材料の開発が行われ、カリーニングラード州ではリチウムイオン電池工場の建設が進む。

 額面通りに受け取れば、ロシアは短期間に何でも国産資源と技術で何でも作れるスーパーハイテク大国になりそうだ。

 しかし、本当にそうなるのか?