マンガン鉱床開発は失敗した。開戦後、採掘後が始まったトゥガンスキー・チタン鉱山は高コストだと“白状”している。

 ロパライト鉱山とリチウム鉱山まだ破綻はしていない。しかし、ロパライト鉱山はソ連時代から掘っていたにもかかわらず、2010年代初頭のレアアース・ブームに全く乗れなかった。推して知るべしだろう。

 ロシアのリチウム鉱山は、スポージュメンというケイ酸塩鉱物を掘る。製錬には化学的に安定なケイ酸塩の化学的分解が必要だ。放置しておけば勝手にリチウムイオンが濃くなる南米の灌水鉱床とは違う。

ロシアのリチウム鉱石スポージュメン

 誰がどう見ても高コストだろう。ロシア自身もボリビアの塩湖で潅水鉱床の開発を始めている。

 ロシアは、特にレアアースとリチウムに熱い視線を注いでいるが、そもそもロシアはレアアースやリチウムを必要としているのか?

 チタン鉱山の開発は分かる。ボーイングがロシアとの取引を切ったとは言え、エアバスはロシアからの調達を続ける。ロシアの軍需産業もチタンが必要だ。

 マンガン鉱山の開発は失敗したが、やりたい理由は分かる。

 ロシアの規模で製鉄をしている限り、大量のフェロマンガン、フェロシリコマンガン、マンガン鉱石が必要だ(製鉄の際に脱酸・脱硫剤や合金成分として使用する)。

フェロマンガン

 ニオブも分かる。ニオブは鉄鋼に添加するが、特に石油・ガス産業で多用する鋼管に使用する。ロシアにも大きな需要がある。

 しかし、リチウムやレアアースはどうだろうか?

 リチウムイオン電池工場の建設を盛んに始めているが、過去のロシアのリチウムイオン電池メーカーは死屍累々だった。

 レアアース磁石は、工業的に生産されたかどうかも怪しい。

 製造は報道されているが、中身は不明だ。技術主権政策に従って工場建設が計画されるが、まだ形になっていない。

 そもそも、ロシアでは最大の用途であるハイブリッド車やEVの生産らしい生産は行われていない。

 リチウムイオン電池も、レアアース磁石も、モーターも、ハイブリッド車やEVも、そう簡単に技術を習得できない。現時点で需要がない以上、今後も5年、10年と需要はない。

 ロシアでも、リチウムとレアアースの資源開発の課題が議論されている。その課題の一つは、ロシアで需要が足りないことだという。

 需要がないなら、そもそも必要ないのではないか?

 技術開発ができなければ、輸出すればいいという発想もある。しかし、輸出には競争力のある価格が必要だ。

 述べてきたとおりの事情で、高コストは確実だ。売れないか、赤字で売るかの地獄の選択しか見えてこない。