●兵器弾薬の問題

 RUSIの分析では以下のようにロシアの兵器の生産の限界を記述している(太字の部分)。

 ロシアは国防産業を大幅に動員し、シフトを増やし、既存施設の生産ラインを拡大するとともに、以前は休止していた工場を再稼働させた。

 これにより、ロシアは年間約1500両の戦車と約3000両の各種装甲戦闘車両を軍に納入している。ロシアのミサイル生産も同様に増加している。

 しかし、ロシアはその工業生産において大きな限界に直面していて、軍に納入される戦車やその他の装甲戦闘車両のうち、約80%は新規生産ではなく、ロシアの戦時在庫を改修・近代化したものである。

 ロシアは2024年まで一貫した生産量を維持できるが、2025年までには車両により大きな改修が必要になることが分かり始め、2026年までには、利用可能な在庫のほとんどを使い果たすことになる。

 しかし、ロシアの兵器生産能力は現在、RUSIの見積よりも厳しい状況になっていると思われる。理由は以下の通りだ。

①ロシアの兵器の損害は生産能力を超えている。

 現時点でロシアは3100両以上の戦車、6100両以上の装甲歩兵戦闘車(IFV)と装甲人員輸送車(APC)、3300台以上のトラック、1100両以上の砲兵、400機近いMRLS、250機以上のSAM(地対空ミサイル)、119機の航空機、138機のヘリコプター、26隻の軍艦と潜水艦(オリックス調べ)を失っている。

 現在、生産や修理して軍に納入する数以上の数の兵器が破壊されている状況である。

②ロシアの戦時在庫そのものが枯渇状態になっている可能性がある。

 また、戦車等の在庫場所の衛星写真を見ると、在庫の兵器がほとんど存在しない状況になっている。

③戦場にオートバイ、バギー(オフロード走行を目的とした軽量型の車)が大量に目撃されるようになった。これは明らかに戦車等の装甲車の不足を示している。

④プーチン大統領が自ら24年ぶりに北朝鮮を訪問したが、武器・弾薬のさらなる提供を要請したと思われる。

 韓国政府の情報によると「プーチン訪問前までに北朝鮮のロシアへの砲弾提供は500万発である」が、それでも不足している状況だ。