ハルキウ正面におけるロシア軍攻撃の失敗

●ロシア軍第83空挺旅団の敗北

 プーチン大統領が重視したロシア軍のハルキウ正面に対する攻撃は、攻勢開始から2週間で、国境から数キロ離れた小さな町ボウチャンシクまで到着した。

 ウクライナ側はこの事態に大きな危機感を持ち、早急に予備部隊を投入して対処したために、ロシア軍の攻撃はボウチャンシクで行き詰まり失敗した。

図2:ハルキウ正面(特にボウチャンシク)の状況

出典:Ukraine Control Map

 この攻撃はプーチン氏が重視する5月9日の対独戦勝記念日に連携したものであり、攻撃の狙いは以下の3点が考えられる。

①国境付近における緩衝地帯の確保。

 国境付近のウクライナ領内に広く深く侵入し、ウクライナ側からの榴弾砲やロケット砲等の攻撃を防ぐ緩衝地帯を確保すること。

②国境から40キロにあるハルキウ市を榴弾砲やロケット砲の火制下に置くこと。

 可能ならばハルキウを占領すること。

③陽動としてハルキウ正面の攻撃を行う。

 つまり、努めて多くのウクライナ軍をこの正面に増援させて、ウクライナ軍の予備を枯渇させる。東部戦線で薄くなったウクライナ軍の弱点を衝いて大規模な攻撃を成功させること。

 しかし、結果的には①の緩衝地帯の設定に失敗しているし、②のハルキウ市のはるか手前で攻撃は停滞している。

 ③の陽動を狙ったとすれば、結果的にそれも失敗している。

 確かにこの正面にウクライナ軍の多くの予備部隊を投入させたことは成果である。

 しかし、ハルキウ正面のロシア軍が苦戦する状況になって、ロシア軍は他の戦線(東部戦線等)から有力な部隊(例えば、精鋭部隊とされている第83空挺旅団)をハルキウ正面に転用した。

 ロシア空挺軍の第83空挺旅団は3週間にわたる展開で大きな損害を出した後、ボウチャンシクから撤退した。

 人員の損耗が多く、戦闘を拒む兵士が多すぎて、撤退せざるを得なかったという。これはロシア軍の陽動の失敗を意味する。