筆者にとって驚きのニュースが4月20日付「解放軍報」で報道された。
中国人民解放軍(=解放軍)の大改革の目玉であった戦略支援部隊が解体され、新たに3つの部隊(情報支援部隊、サイバー空間部隊と軍事宇宙部隊)が編制されるというのだ。
解放軍の大改革は、習近平主席の肝煎りで2015年末から断行されたものだ。解放軍改革の最大の目的は、腐敗で有名だった解放軍を「戦って、勝つ」軍隊にすることだった。
習近平主席は改革開始を公表した2015年末時点での評価として、「解放軍は戦えないし、戦っても勝てない軍隊だ」と考えていた。「戦って、勝つ」とは、米軍と戦い、米軍に勝つことだ。
その大改革から8年しか経過していないのに、早くも改革の目玉=壮大な実験と言われた戦略支援部隊が解体されるというのだ。これは、戦略支援部隊の壮大な実験に無理があったということだ。
以下、解放軍の2015年の解放軍改革について説明するとともに、その改革がどのように変わるのかを紹介したいと思う。
1 概成したはずだった中央レベルの改革
2015年末から始まった解放軍改革の「首から上」と呼ばれる「軍中央レベル」の改革は概成したと評価してよい。
軍中央レベルの改革とは、従来の「7大軍区」を廃止し「5大戦区(戦域軍:Theater Command)」を新編し、陸軍司令部・ロケット軍・戦略支援部隊・統合兵站支援部隊を編成し、腐敗で有名だった中央軍事委員会直属の参謀組織を改革することだ。
図1は解放軍の改革後の組織図である。
改革後の解放軍を表現する語句として、「軍委管総、戦区主戦、軍種主建」がキーワードだ。
つまり、「中央軍事委員会がすべてを管理し(軍委管総)、5つの戦区が作戦を実施し(戦区主戦)、軍種である陸・海・空・ロケット軍は各々の指揮下部隊の戦力開発(部隊の編成装備、訓練など)を担当する(軍種主建)」という意味だ。
図1「改革後の解放軍の組織図」
改革の目標であった「解放軍の総数230万人を30万人削減して200万人にする」計画は2017年末までの2年をかけて達成された。
この30万削減のほとんどは陸軍の削減であったが、音楽隊や雑技団などの非戦闘組織の削減も行われた。
その結果、陸軍は18個集団軍から5個集団軍が削減され、13個集団軍に大幅に縮小された。
軍種レベルの変更もなされた。
改革以前には、人民解放軍は陸軍、海軍、空軍の3軍種と第2砲兵で編成されていた。
解放軍改革により、陸軍司令部、ロケット軍、戦略支援部隊、統合兵站支援部隊が新設された(図1参照)。なお、海軍と空軍に変化はない。
戦略支援部隊は、陸・海・空軍・ロケット軍と同列の軍種ではなく、独立した職種として中央軍事委員会の直轄組織として戦区を支援する部隊である。