サイバー戦と「戦略支援部隊」

 中国のサイバー戦を議論する際に戦略支援部隊を抜きにしては語れない。戦略支援部隊は、解放軍がサイバー戦を遂行する際に不可欠な部隊である。

●ネットワークシステム部は、サイバー戦、電子戦、心理戦、技術偵察などを担当し、解放軍のすべての戦略情報戦部隊を統制する。

 この集約化は、解放軍のサイバースパイ活動部門とサイバー攻撃部門の間の作戦調整上の課題に対処するためだ。

●解放軍は、サイバー戦および電子戦任務を統合した「統合ネットワーク電子戦」という戦略に基づき、新たな全軍体制を構築している。

 戦略支援部隊の創設は、解放軍の「統合ネットワーク電子戦」という長年の目標を制度化するものだ。

●戦略支援部隊は、情報を戦争における戦略的資源として捉える中国の軍事思想の進化を体現しており、情報システムへの依存から生じる軍隊の能力強化と脆弱性の両方に対し果たす役割を認識している。

●戦略支援部隊は、戦区などの統合部隊の情報作戦を支援するために、サイバースパイ活動とサイバー攻撃を統合する。

 さらに情報作戦の計画と戦力開発を密接に連携させ、情報作戦に関する指揮・統制の責任を統合することにより、情報作戦の遂行能力を向上させている。

ネットワークシステム部が担当するサイバー戦

 戦略支援部隊のサイバー任務は、ネットワークシステム部に与えられている。

 ネットワークシステム部の指揮下部隊は「サイバー部隊(網军)」または「サイバー空間作戦部隊(網络空间作战部队)」と呼ばれている。

 その名称にもかかわらず、ネットワークシステム部とその下部組織はサイバー戦のみならず、電子戦、そして潜在的には三戦(輿論戦、心理戦、法律戦)を含む任務を担当し、より広範な情報戦を遂行しているから複雑だ。

 中国の戦略的サイバースパイ部隊の大半は、ネットワークシステム部に大量に移されている。

図4「解放軍の軍事情報システム」

出典:China’s Strategic Support Force: A Force for a New Era

 サイバー任務は、主に技術偵察局の12個の局(図4参照)が担当し、サイバースパイ活動と信号情報活動を担当している。

 例えば上海所在の第2局には北米を担当する有名な61398部隊、青島所在で日本と韓国を担当する第4局(61419部隊)、北京でロシアに関係する活動をしているとみられる第5局(61565部隊)、武漢所在で台湾・南アジア担当する第6局(61726部隊)から、上海所在で宇宙衛星の通信情報を傍受する第12局(61486部隊)まで計12の主要部局がある。

 なお、これらの部隊には、サイバー戦の専任部隊のみならずC4ISR(Command Control Communications Computers Intelligence Surveilance Reconnaissance)を担当する部隊も含まれている。