「宇宙システム部」と「ネットワークシステム部」

 解放軍の再編成の結果、戦略支援部隊の「宇宙システム部」は宇宙戦の中核組織として、宇宙での攻撃と防衛を含む解放軍の宇宙戦を担当するようになった。

 中国の宇宙開発と宇宙戦でぜひ知っておいてもらいたい組織がある。

 戦略支援部隊の指揮下にある「宇宙システム部」であり、宇宙戦の核になる組織である。

「宇宙システム部」は、衛星打ち上げ(作戦上即応性の高い移動式の発射装置の打ち上げを含む)、宇宙遠隔計測(テレメトリ)・追跡・制御、戦略情報支援、対宇宙(英語では「カウンター・スペース」と表現され、敵の衛星などの破壊や機能妨害を意味する)など、解放軍の宇宙作戦のほぼすべての機能を統制している。

 宇宙システム部が中国宇宙開発の現場における主役だ。

「ネットワークシステム部」は、コンピューター・ネットワーク(以下ネットワーク)の開発、サイバー監視、ネットワーク攻撃およびネットワーク防衛任務の遂行について、中国のサイバー部隊を監督する。

 つまりサイバー戦の核となる部隊だ。

 また、「ネットワークシステム部」は、対宇宙ミッションの「中心」でもあり、サイバー戦や電子戦対策、宇宙監視、技術偵察を含む解放軍のノンキネティック(非物理的)な対宇宙ミッションを担当している。

 つまり、ネットワークシステム部は、宇宙戦において宇宙システム部を補完する役割も担っているから複雑だ。 

宇宙戦と戦略支援部隊

 戦略支援部隊は、衛星打ち上げとその関連支援、テレメトリ(遠隔計測装置を使って遠隔地の測定結果をコントロールセンターに送信すること)、衛星の追跡・制御、宇宙情報支援、攻撃的宇宙戦、防御的宇宙戦を担当する。

 これは、戦略支援部隊が改革前の解放軍の宇宙作戦のほぼすべての任務を引き継いだことを意味する。

 これまで、解放軍全体に分散する宇宙関連組織を、統一された軍事宇宙部門に再編することは喫緊の課題であった。

 現在、戦略支援部隊の宇宙任務を遂行する部隊は、中国の「軍事宇宙部隊(军事航天部队)」と呼ばれる。

 一方、有人宇宙ミッションを統括する部署は、当該部署の軍事化を避けるために、戦略支援部隊ではなく装備発展部の所属になっている。

 明らかに、有人宇宙ミッションを宇宙戦とは区別している。この点は重要だ。

 宇宙通信衛星の管理などを担っていた旧総参謀部の衛星メインステーションは、戦略支援部隊の指揮下に入った。

「北斗衛星測位システム」を担当する旧総参謀部の衛星測位基地も最終的に、戦略支援部隊の指揮下に入った。

 2017年8月、宇宙での衛星破壊実験に使われた「DN-3」対衛星ミサイルは、戦略支援部隊の酒泉衛星打ち上げセンターから打ち上げられた。

 このことから戦略支援部隊がこれらのシステムの試験や実用化に責任を有していることが推察される。