3 戦略支援部隊解体:実験は失敗した?

 以上みてきたように、戦略支援部隊は非常に複雑な組織だ。

 理念的には現代戦に必須な情報戦、サイバー戦、電子戦、宇宙戦を一つの組織に担当させるのは理にかなっているところはある。

 しかし、実際の作戦を理念通りに行うのは簡単なことではない。将来的にはAIを駆使して戦略支援部隊の作戦を円滑に実施できるかもしれない。

 しかし、人間の指揮官が戦略支援部隊に与えられたミッションを円滑に行うのは至難の業だ。

 また、今回の解体の背景には汚職等の腐敗の問題があったのかもしれない。

 今回の改編では、戦略支援部隊を解体して新たに3部隊を設け、4軍種(陸軍、海軍、空軍、ロケット軍)・4部隊(情報支援部隊、サイバー空間部隊、軍事宇宙部隊、統合兵站部隊)の体制になる。

 新たな「サイバー空間部隊」は戦略支援部隊のネットワークシステム部を母体として編成するのであろう。

 新たな「軍事宇宙部隊」は宇宙システム部を母体として編成されるのであろう。

 新たな「情報支援部隊」はネットワークシステム部に存在する情報部隊を母体に編成するのだろう。しかし、詳しい情報はまだ明らかにされていない。

 今回の戦略支援部隊の解体は、昔の体制に戻ることを意味するが、その決定は現実的で実際的なものかもしれない。

 ただ、2015年の解放軍改革でも大きな混乱があったが、それをまた元の体制に戻す今回の改編にも大きな混乱が予想される。新組織が機能するまでには相当な時間が必要だろう。

 習近平主席の解放軍改革は平坦なものではなく試行錯誤を繰り返している。今後とも紆余曲折が予想されるが、そこには多くの教訓がある。

 筆者としてはクールにその状況を分析していきたい。