従来の開発アプローチとは一線を画すSakana AI
こうした取り組みへの共感、あるいは将来のさらなる成功への期待から、ベンチャーキャピタルからの投資が相次いでいる。2024年1月には約45億円の資金調達に成功し、さらに6月には約200億円の資金調達を行う予定であることが報じられた。
これらの投資には、シリコンバレーの有力ベンチャーキャピタルや日本の大手企業からのものも含まれており、Sakana AIへの期待の高さを物語っている。
AIに限った話ではないが、先進的なテクノロジーを、少数の大手企業が独占するという状況はマイナスの側面が大きい。またAIについて言えば、世の中で使われるAIモデルの種類が少なくなった場合、それらが同じ間違いを一斉に起こしてしまったり、さらにはその間違いの影響が増幅してしまったりするリスクがあることが指摘されている。
それを防ぐという点でも、優秀なAI開発企業が、東京のように欧米とは離れた場所から登場するというのは、極めて有意義であると言えるだろう。
伊藤COOは前述のセミナーにおいて、OpenAIなど主要企業から提供されるAIモデルが解決できる領域で競うのではなく、「むしろいま存在しているモデルでは自身の課題が解決できないと仰っている顧客に対して、その方の固有の問題に対処できるようなモデルをつくっていきたい」とも発言している。
欧米中心の大規模開発アプローチから一線を画すSakanaの姿勢は、AI界隈で大企業の存在感が増せば増すほど、より価値が高まっていくのではないだろうか。
いまや飛ぶ鳥を落とす勢いのOpenAIも、非営利の研究機関として設立されたのは2015年のこと。それからおよそ10年で、現在のようにAI界隈を大きく左右する存在になった。Sakana AIもこれから大きく成長して、「2030年代はサカナの時代」と呼ばれるようになるかもしれない。
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(ほか多数)
【小林 啓倫】
経営コンサルタント。1973年東京都生まれ。獨協大学卒、筑波大学大学院修士課程修了。
システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業、大手メーカー等で先端テクノロジーを活用した事業開発に取り組む。著書に『FinTechが変える! 金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』『ドローン・ビジネスの衝撃』『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(草思社)、『データ・アナリティクス3.0』(日経BP)、『情報セキュリティの敗北史』(白揚社)など多数。先端テクノロジーのビジネス活用に関するセミナーも多数手がける。
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