なぜSakana AIという名前なのか?
まず挙げられるのは、テクノロジー系スタートアップとしては当然の話だが、その技術的な革新性だ。簡単に言ってしまえば、Sakana AIは現在スタンダードとなっているAI開発手法とは全く異なる、新たなAI開発手法を編み出したのである。
実はSakanaという社名自体も、開発手法に由来している。彼らは「集合知/群知能(Collective Intelligence)」というアプローチでAIを開発している。これは複数の知的な存在(人間やAIモデル)が協力して問題を解決したり、新しい知識を生み出したりするという考え方だ。
人間をはじめとしたさまざまな生物は、個の力で問題を解決するのではなく、多数から構成される「群れ」が力を結集することで、より複雑な問題を乗り越えたり、革新的なアイデアを生み出したりできる場合がある。
AIの世界でも、多数の異なる専門性を持つAIモデルやシステムが協力し合うことで、単一の大規模AIシステムよりも柔軟で、効果的な問題解決が可能になるのではないか──というのがSakana AIの考え方だ。
彼らはこの「たくさんの小さなAIが協力して働くことで、全体として優れたシステムが生まれる」という姿を、「魚の群れ」に見立てている。そこで「サカナ」AIというわけだ。
彼らのロゴマークにも魚の群れが描かれており、創業者へのインタビュー記事によれば、赤い魚は「これまでの技術開発とは一線を画し、革新的なAIを生み出そうという決意」なのだという。
では具体的に、Sakanaはどのような技術を生み出したのか。そのひとつは「進化的モデルマージ(Evolutionary Model Merge)」という開発手法だ。これは複数のAIモデルを組み合わせて、そこから新しい高性能なモデルを作る手法である。
具体的には、次のような流れとなる。