人の死期を予測するAIが登場したらどうする?(写真:アフロ)
  • さまざまな分野で活用が進む生成AI。人間の死期を予測可能なAIを開発したという研究機関も登場した。
  • あくまでも研究用プロトタイプだが、保険会社などが活用すれば、情報格差を活用して不当に利益を得る可能性もある。
  • おとぎ話に登場する魔法の水晶玉が現実のものになるのも、そう遠くないのかもしれない。それまでに私たちの社会は強力な技術を上手く制御するための準備を整えられるだろうか。

(小林 啓倫:経営コンサルタント)

ChatGPTがデンマーク国民の人生を学習したら?

 これから起きる未来を予測したい――。多くの人々がそんな夢を抱き、さまざまな手段を用いて実現しようとしてきた。かつては水晶玉のように怪しげな技が使われていたが、現代では科学や技術の力がそれに取って代わり、天気予報のように一定の成功を収めている分野もあることはご存知の通りだ。

 そして今、注目を集めているのがAIを活用した未来予測である。以前、紹介した「犯罪予測AI」(過去の犯罪データに基づいて犯罪が起きそうな場所と時間を算出するというもの)のように、精度が実は1%以下だったというケースもあるが、多くの研究者や企業がその実用化に取り組んでいる。

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 その中でも、最近、興味深い研究結果がデンマークから発表されている。およそ8割という高い精度で、人間の死期を予測可能なAIを開発したというのだ。

 これはデンマーク工科大学(DTU)の研究者らが発表したもので、2023年12月にNature Computational Science誌に論文が掲載されており、またDTUのサイトにプレスリリースが掲載されている。

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 それによると、彼らはデンマークの全国民を対象としたデータベースから情報を取得。さまざまなライフイベントが記録されたデータセットを用意し、それをAIに与えて学習させた。

 それは実に約600万人(デンマーク国民のほぼ全員分に匹敵する)、2008年から16年にかけての8年分に相当する量のデータで、さらに健康状態や労働時間、給与といった繊細な情報も含まれていたそうである。

 そして誕生した「life2vec」というモデルは、「死亡率から性格のニュアンスに至るまで、多様な結果を予測することが可能であり、精度は最先端のモデルを大幅に上回る」ほどの性能が見られたそうだ。

 具体的に、life2vecの精度はどの程度だったのだろうか。