- 生成AIの登場によって、それを活用した独創的なサービスが続々と誕生している。
- その中に、亡くなった人のテキストメッセージや音声などのデータを学習させ、故人のように会話できるアプリも登場している。
- まるでイタコや某新興宗教の指導者のような話だが、AIは“死者”との会話も可能にしようとしている。
(小林 啓倫:経営コンサルタント)
ロシアの哲学者、政治家、そして後に革命家となったウラジーミル・レーニン。ロシア共産党の指導者として、1917年の十月革命を指導し、世界初の社会主義国家であるソビエト連邦社会主義共和国(ソ連)を樹立した人物だ。
そんな彼は、プーチン大統領のウクライナ侵攻をどう思っているのだろうか?「ロシアのウクライナ侵攻を支持するか」という直球の質問を彼にぶつけてみたところ、「帝国主義的な野望よりも、労働者階級と抑圧された民族の利益を優先すべきだ」との答えが返ってきた。労働者階級の革命を主導した、彼らしい反応と言えるだろう。
もちろん、本物のレーニンに質問できたわけではない。彼はいまから100年前の1924年に脳卒中で亡くなり、遺体は防腐処理を施され、モスクワにあるレーニン廟に安置されている。筆者が問いかけたのは、「Hello History」というスマートフォンアプリの中で「再現」されたレーニンだ。
このアプリは、OpenAI社が開発したGPT-3.5というLLM(「大規模言語モデル」の略で、生成AIの頭脳となる技術であり、ChatGPTもその裏側でLLMが動いている)を使い、レーニンのように振る舞うAIを用意。それに対して、ユーザーが話しかけたり、さまざまな質問をしたりできるという仕組みだ。
Hello Historyにはこの他にも、アインシュタインやガンジー、マリリン・モンローなど、さまざまな歴史上の偉人や有名人をAIで再現しており、ユーザーは彼らとの会話を楽しむことができる。
AIは参照するデータさえあれば、それを読み込み、中に含まれている情報を真似してさまざまな振る舞いをすることができる。Hello Historyでは、LLMに彼らが用意した歴史上の人物に関するデータを与え、「この情報に基づいて○○さんのように会話しろ」と命じることで、先ほどのレーニンのようなキャラクターを実現しているわけだ。
もちろん、どのようなデータが準備されたのかは分からないので、どこまで正確な情報がAIに与えられたのか、AIがどれほど正確にそれを参照して回答しているのかは分からない。しかし、データさえ準備できれば、同じ仕組みで、他にもさまざまな人物をAIに模倣させることができる。