無痛分娩補助が少子化対策?(写真:ritfuse/Shutterstock)

東京都知事選(7月7日投開票)で3選を目指す小池百合子都知事が発表した公約には、麻酔を使って陣痛を和らげる「無痛分娩」の助成制度の創設が盛り込まれました。無痛分娩の調査研究が専門の田辺けい子・神奈川県立保健福祉大学准教授は「分娩時だけの小手先の補助ではなく、産前産後の手厚いサポートが重要」と指摘します。ここ数年で日本でも無痛分娩が広がりつつありますが、日本は「無痛分娩」後進国。日本の現状や今後の課題ついて、田辺氏に聞きました。

(河端 里咲:フリーランス記者)

──小池百合子都知事が6月18日に発表した公約に無痛分娩の補助が含まれました。

田辺けい子氏:公約の中にしっかりと「無痛分娩」という言葉が上がったこと自体はすごく評価できると思います。現状では、今回の無痛分娩の費用補助の位置付けが「少子化対策」なのか「女性の権利の保障」なのか実際に中身を見てみないとまだ分かりません。

田辺 けい子(たなべ・けいこ) 神奈川県立保健福祉大学准教授(助産師)。専門は助産学、医療人類学。著書に「無痛分娩と日本人」「無痛分娩パーフェクトガイド」など。

 ただ「少子化対策」として捉えた場合、「無痛分娩の費用が負担されるから子供を産もう」とどれほどの人が思うでしょうか。無痛分娩の費用は通常の分娩費用に追加で10万〜15万円。もちろん、無痛分娩にしようか悩んでいた人が「補助があるなら無痛にしてみよう」と、後押しされる面はあると思います。

 しかし無痛分娩の費用が補助されるぐらいで子どもを産もうと思うほど、みなさんバカじゃない。子育てしていくにはもっとお金がかかるとみなさん知っています。言い方は悪いですが「こんな小手先のことでは…」と感じます。

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──日本の無痛分娩の現状を教えてください。

田辺氏:2020年の調査では、全分娩に占める無痛分娩率が8.6%でした。経膣分娩(帝王切開以外)の中の割合でみると1割程度。2008年の無痛分娩率は2.6%だったので、だいぶ増えてきています。無痛分娩を取り扱う施設は20年に505施設、全体の26%でした。最新の23年調査の結果はまだ出ていないですが、無痛分娩率は10%を超えてきていると思います。

──一方、フランスや米国では無痛分娩の割合が7〜8割を超えています。それに比べて日本の無痛分娩率が低いのはどうしてですか。