写真はイメージ(Photo Nature Travel/Shutterstock.com

(フォトグラファー:橋本 昇)

「地雷を踏む」という言葉があるが、日本には地雷はない。だから私たちは平気で「地雷を踏んでしまったから」などと言う。しかし、実際に地雷の恐怖を経験したら安易には使えない言葉だ。

 今、世界中に埋まっている地雷は1億個以上だという。地雷は「沈黙の兵器」だ。戦争から何十年たってもその場で眠り続け、人々を苦しめ続ける。今もウクライナではロシア軍によって大量の地雷がばらまかれているというが、このばらまかれた「沈黙の兵器」を全て撤去するには気の遠くなるような年月を要するのだ。

のどかに見える風景の地面に無数の地雷

 2006年、私はカンボジアで地雷撤去の様子を取材した。現場はシェムリアップからヘリでタイとの国境方面に約1時間飛んだ人口500人ほどの長閑な農村だ。濃い緑の熱帯樹が民家を囲み、田んぼの伸びた稲が風に揺れている。

田んぼのあぜ道で流れ出た地雷を踏み片足を失ったカンボジア農民(写真:橋本 昇)田んぼのあぜ道で流れ出た地雷を踏み片足を失ったカンボジア農民(写真:橋本 昇)
拡大画像表示

 水路には腰まで浸かった水牛、畔道を行進するアヒルたち。時間を忘れるような心地良い風景に心を奪われていたが、この風景の裏に無数の「沈黙の兵器」が潜んでいるという。

地雷により車椅子生活を強いられた男性。傷口が安定すると義足が着けられるという(写真:橋本 昇)地雷により車椅子生活を強いられた男性。傷口が安定すると義足が着けられるという(写真:橋本 昇)
拡大画像表示