ウクライナのゼレンスキー大統領は、12月1日に公開されたAP通信社とのインタビューで「我々は望んだ結果を得られていない。これは事実だ」と語った。
ウクライナ軍は今年6月、部隊をアゾフ海まで進めてロシア軍の占領地を分断することをめざし、東部ドネツク州や南部ザポリージャ州で一斉に攻勢を開始した。大統領は今回、この反転攻勢が行き詰まっていることを初めて認めた。
ロシア軍と対峙する前線はどうなっているのか。反転攻勢の現場であるウクライナの東部戦線と南部戦線の最前線を訪ねその実態を取材した。(取材は10月下旬)
世界屈指の穀倉地帯と炭田地帯
日本のテレビ局や新聞社など大手の企業メディアが、自社の記者やカメラマンを「危険地」に送らなくなって久しい。ウクライナ戦争においても、日本のテレビは、前線の状況を、ウクライナ、ロシア両国の国防省が提供する動画やBBC、CNNなど欧米のメディアの配信映像を使って伝えている。
私は、日本人の眼で現場を取材すべきだとの思いで、紛争地取材の経験が豊富なジャーナリスト、遠藤正雄さんとともに、ウクライナ軍反転攻勢の最前線をまわることにした。
この日私たちは、ロシア軍との激戦が続くドネツク州の前線へと向かった。車窓から見えるのは、世界でもっとも肥沃な土壌といわれる黒土(チェルノーゼム)の耕作地。その肥沃さは、第2次大戦中、侵攻してきたナチスが黒土を貨車に積んではるばるドイツに運んだほどだ。
地平線までつづく広々とした畑地は、収穫を待つトウモロコシの黄色と発芽した小麦の緑のコントラストが美しい。