(舛添 要一:国際政治学者)
世界はイスラエルとハマスの戦いに注視し、ウクライナ戦争への関心を失いつつある。しかし、ウクライナ、特に東部、南部ではウクライナ軍とロシア軍の間で激しい戦闘が続いている。ウクライナ軍が今年の6月上旬反転攻勢を開始してから半年が経つが、期待したような戦果はあがっていない。
ウクライナ軍の前に立ち塞がるロシア軍
プーチン大統領は、12月1日、兵員を17万人、約15%増強する大統領令に署名した。これで、ロシア軍は最大132万人に増えることになる。昨年9月には予備役30万人の部分動員を行っている。まさに、人海戦術でウクライナ軍の反転攻勢に対峙しようとしているのである。
ロシア軍は、占領地を死守するため、大量の地雷を敷設している。これがウクライナ軍にとって極めて厄介な存在となっている。
さらに言えば、ウクライナ軍は制空権を握れていない。ロシア空軍に太刀打ちできず、それが地上部隊の前進を妨げる原因になっている。制空権奪取の切り札としてアメリカのF16戦闘機が供与されることになっているが、ウクライナのパイロットに英語のレッスンから始めねばならず、実際に戦闘機が投入されるのは数カ月後になると見られている。
3月にはロシアで大統領選が行われるが、プーチンが立候補して当選し、政権を継続するのは当然と観測されている。それを確実にするためにも、プーチンとしては軍に大きな戦果を挙げてもらう必要があるのである。
しかも、中東情勢の深刻化は、ウクライナにとって不利な状況を生み出しつつある。ウクライナ軍の敗北ということも十分にありえるのである。