中国が仕掛ける「一帯一路」と「債務の罠」
インド洋を舞台に中国とインドの“国盗り合戦”が激しさを増している。ともに人口14億人超の大国で核兵器を持つ隣同士だけに、全面戦争に陥れば「第3次世界大戦」の引き金にもなりかねない。
両国の争いの歴史は古く、1962年にカシミール高原を舞台にした「中印国境紛争」では、2000名以上の戦死者を出す大戦争となった。
その後も双方の国境線であるヒマラヤ山脈~カシミール高原のいわゆる「世界の屋根」では、しばしば小競り合いが起こるが、戦略的重要性よりは大国のメンツの張り合いという意味合いが強い。2020年6月にも両軍が激突し、数十名の死者が出ている。
両者の“主戦場”は21世紀に入ると変化し、高い経済成長を背景に軍拡、特に海軍増強に血道を上げる中国は、その矛先を徐々にインド洋へと向ける。
2013年に中国の国家主席となった習近平氏は、壮大な経済構想「一帯一路」もぶち上げ、インド洋進出に拍車をかける。
巨大な経済圏を中国~欧州に構築するという「現代版シルクロード」で、ユーラシア大陸を鉄道で横断する陸路と、インド洋を渡りスエズ運河から地中海に入る海路の二段構えだ。
「中国側は『あくまでも経済活動』と強弁するが、覇権主義の彼らの言い分を真に受ける人間はよほどのお人よし。裏に軍事的思惑があるのは間違いない」と、ある中国ウォッチャーは強調する。
中国はルート上の国々に「札ビラ」をチラつかせて参画を働きかけ、賛同した国に巨大なインフラ投資を行い、インド洋沿岸に次々と一大港湾を建設していく。ただし大半は借金で、債務国側が返済に困ると“借金のカタ”として長期間の港湾管理権を頂くという、“反社”顔負けの手荒な手口で次々と掌中に収めている。世に言う「債務の罠」だ。
これに対し、インド洋は目先にある「湖」のような存在と見るインドは警戒感をあらわにする。自らの縄張りにヒマラヤの向こうの中国が手を伸ばしてくるのを見過ごせば、地域覇権国の沽券に関わるからである。
これらの港湾は貿易港としてだけでなく、中国海軍の基地として活用される可能性が高く、インドと「クワッド」(自由・民主主義を掲げるインド太平洋4カ国の安全保障的な枠組み)を組む、日米豪や他の西側諸国も注視する。