(国際ジャーナリスト・木村正人)
「プノンペンと北京の固い友好関係から生まれた歴史的偉業」
[ロンドン発]10月16日行われたカンボジアのシェムリアップ・アンコール国際空港の開港式典でヴォンゼイ・ヴィソート副首相は「プノンペンと北京の固い友好関係から生まれた歴史的偉業」と手放しで称えた。コロナ・パンデミックで落ち込んだユネスコ世界遺産のアンコール遺跡に観光客が戻ってくることが期待されている。
中国の習近平国家主席が提唱する巨大経済圏構想「一帯一路」はカンボジア全土の主要な高速道路や橋、経済特区の建設費を負担しており、11億ドルにのぼる新空港の建設資金を提供した――。米国外でだけ放送される同国営放送「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」(11月3日付)はこう報じている。
新空港は主に中国の雲南投資グループとシェムリアップ州の2社により開発された。雲南投資グループが2078年ごろまで新空港を管理し、その後、管理権はカンボジアに戻される。「新空港はカンボジア経済にプラスだが、融資の返済や空港の維持・管理費はカンボジア政府に重くのしかかる」という「債務の罠」の危険性をVOAは伝えている。
かつてはノンビリしたビーチタウンだったカンボジアのシアヌークビルは中国の投資によって一変した。ギャンブル禁止なのにもかかわらず、中国人経営の外国人向けカジノが急増した。
シアヌークビルは一帯一路のルート上にある主要都市だ。高層ビルがそびえ立ち、ネオンサインに彩られ、汚職、誘拐、人身売買がはびこる。もはやカンボジアの面影はない。