グローバルサウスへの投資機会は増大している。写真はインド・ムンバイの建設現場(写真:AP/アフロ)

 本連載では、ますます不透明になり、地政学リスクが増すばかりの時代に企業が取り組むべき「5つの指針」を示してきた。最終回となる今回は、指針5「米欧日によるグローバルサウスの取り込みが加速。そこで生まれる事業機会を獲得せよ」について語る。

【米中分断時代の経営論(1)】貿易摩擦から価値観の戦いにシフトした米中対立、経営者はいかに対応すべき
【米中分断時代の経営論(2)】誰もに降りかかる米中対立の火の粉、対象は先端技術の分野から汎用品まで拡大
【米中分断時代の経営論(3)】米中・対ロで乱立する禁輸・投資規制、地政学リスクの増加で企業が被る実害
【米中分断時代の経営論(4)】米中欧で異なるデータ規制、GAFAMも苦慮するデジタル分断にどう対応するか
【米中分断時代の経営論(5)】“筋肉質バカ”な日本の製造業、効率一辺倒のサプライチェーンから脱却せよ

(羽生田慶介:オウルズコンサルティンググループ 代表取締役CEO、 オウルズコンサルティンググループ通商・経済安全保障支援チーム)

「米中対立等の地政学リスクの高まりに対応しなければならない」「経済安全保障への取り組みは喫緊の経営課題だ」と聞いて、「わが社にとってはビジネス上のリスクとコストが増すばかりだ」と溜息をついている経営者も多いことだろう。

 しかし、地政学リスクの拡大は事業のリスクやコストを増大させるだけではない。これらへの対応を契機に、ビジネス・チャンスを捉えていくことが経営者に求められている。

 実際に、地政学リスクを踏まえたサプライチェーンの見直しをDX(デジタル・トランスフォーメーション)推進のきっかけにする企業もある。また、生産拠点の多様化や国内回帰を進める際に、長年の課題であった生産工程の自動化や部品の共通化を図り、効率化・コスト削減を同時に進める企業も出てきている。

 これらに加えてもうひとつ、注目すべき新たなビジネス・チャンスにつながる動きがある。それは、G7諸国等による「グローバルサウス」への莫大な投資だ。

 深刻度を増す米中両陣営の対立に対して、「グローバルサウス」は中立の立場をとることで自国の利益を確保する。いわば「漁夫の利」を得ようとしており、そこに多くの新たなビジネス・チャンスが生まれている。

 米国・中国それぞれによるグローバルサウス各国への影響力強化を目的とした支援や投資の拡大が増大しているのだ。