- 現在の米中対立は、いわゆる貿易摩擦ではなく、「自由・民主主義陣営」対「専制体制陣営」という価値観の相違によるものだ。そのため、両者の対立は形を変えながら中長期的に続く。
- 企業経営者も、これまでのような「平時」ではなく、「有事」を意識した経営を進めなければならない。
- 米中がパッチワーク的に規制を導入する今の時代、地政学リスクを経営計画に反映させるために必要な5つの指針を提示する。
(羽生田慶介:オウルズコンサルティンググループ 代表取締役CEO、オウルズコンサルティンググループ通商・経済安全保障支援チーム)
いま多くの企業が中期経営計画の策定にあたり、こぞって専門家にかけている問いがある。それは「米中対立はいつまで続くのか。改善するのか」という国際情勢の見通しだ。
結論から言おう。
2023年に策定する中期経営計画の対象期間では、抜本的な米中対立の改善は期待することは困難だ。いま起きている米中対立は、もはや国際収支の不均衡是正を目的とした「貿易摩擦」ではない。
米国のトランプ前政権が掲げた大義の中核は、あくまでも「米国の貿易赤字解消・雇用確保」という経済的論点だったが、いまや対立の構図は「黒字国」対「赤字国」ではなく、「自由・民主主義陣営」対「専制体制陣営」という価値観の相違によるものだ。
この対立の渦中にあるウクライナやNATO加盟申請に動きだしたその他の国にとっては、まさに国家存亡の岐路とも言える歴史の大きな節目にある。
中期経営計画におけるベースシナリオとしては、中国や米国、またはロシアや台湾など渦中の政権が今後数年で一新される国際情勢の絵姿は前提にできない。
米中をはじめとした価値観の異なる陣営の対立が、形を変えながら中長期的に続くという前提で企業がとるべき方策を考える必要がある。
これまでとは全く異なる外部環境分析を前提とする次の中期経営計画。ビジネスを自衛するための、そして新たな機会をつかむためのポイントを整理しよう。