- 5月27日に「繁栄のためのインド太平洋経済枠組み(IPEF)」の閣僚会合において、「サプライチェーン協定」交渉が実質的に妥結した。
- IPEFとは、インド太平洋地域の多様な国々の協力によって、サプライチェーンを強靱化するための取り組みだ。日米両国を含むインド太平洋地域の14カ国が合意したことは、日本企業の事業活動にも少なくない影響を与えるだろう。
- これは日米両国等が進めるフレンド・ショアリングによるデリスキング(リスク軽減)の具体化の第一歩でもあり、今後の行方が注目される。
(菅原 淳一:オウルズコンサルティンググループ・プリンシパル)
I. IPEF閣僚会合で「サプライチェーン協定」が実質妥結
2023年5月27日、米デトロイトで開催された「繁栄のためのインド太平洋経済枠組み(IPEF)」の閣僚会合において、「サプライチェーン協定」交渉が実質的に妥結した。
2022年5月に立ち上げられたIPEFにとって初めての具体的成果であり、サプライチェーン(供給網)に特化した初めての多国間協定である。今後、最終的な条文確定や署名、参加各国の国内手続きを経て、発効することとなる。
IPEFは、日本や米国などインド太平洋の14カ国が参加する経済枠組みであり、「貿易」「サプライチェーン」「クリーン経済」「公正な経済」の4つの「柱」で交渉が行われている。
今回、そのうちの第2の柱「サプライチェーン」において、交渉が実質的に妥結した。
GDPで世界の約4割(約38兆ドル)、人口では3割強(約25億人)を占める諸国がサプライチェーンの強靱化を目指す取り決めに合意したことは、世界経済にも、また、日本企業の事業活動にも少なくない影響を与えることになるだろう。
他の3つの「柱」についても、「クリーン経済」において日本とシンガポール主導の下、一部の参加国で「地域水素イニシアティブ」を立ち上げることで合意するなど、一定の進展がみられた。
今後、11月のAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議時の合意を目指して交渉が進められる。