G7広島サミットで急遽開催されたQuadの4カ国の首脳(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)に合わせて、日米豪印による枠組み「Quad(クアッド)」の3回目となる対面の首脳会合が開催された。

 米バイデン大統領の予定変更で一時は開催自体が危ぶまれたものの、会合では新たな進展もあった。特に、昨今の米中間の覇権争いの新たな火種となっている海底ケーブルや、世界的な課題となっている半導体や重要鉱物のレジリエンスで新たな枠組みが構築された。

 外交・安全保障面もQuadの重要な要素だが、あまり報道されていない経済面に着目をすると、新たなビジネス上の商機も見える。

(福山 章子: オウルズコンサルティンググループ チーフ通商アナリスト)

I. デジタル分野を中心に経済面で協力を進めてきたQuad

 2023年5月20日夜、G7広島サミットに合わせてQuad(日本、米国、豪州、インドの4カ国による対話)首脳会合が開催された。当初は、5月24日に豪州で開催される予定だったが、米国の国内事情によりにバイデン大統領の訪豪が直前に中止。4カ国の首脳が滞在していた広島で急遽開催される運びとなった。

 G7会合と夕食の間に押し込まれた50分弱の会合ではあったが、新たな取り組みも発表された。

 Quadは、2007年に日本の安倍首相(当時)が、権威主義的な動きを強める中国に共同で対処することを念頭に、日本、米国、豪州、インドの4カ国の戦略対話の必要性を訴えたことに端を発する。

 自由や民主主義、法の支配といった共通の価値観を持つ4カ国がインド太平洋地域での協力を確認する場とされた。

 インドと豪州が、中国を刺激することを避けたために創設から数年間は活動が停滞していたが、両国と中国との関係が変化したことに伴い、2017年に再び動き出した。

 その後、米国のバイデン大統領の強い働きかけによって2021年9月に米国で初の対面での首脳会合が開催された。今般は、3度目の対面での首脳会合となる。

 Quadの創設以来、その意義は軍事面、特に海洋安全保障にあるとされてきたが、インドの慎重姿勢などを背景に、現在では軍事面よりも経済面での連携が進む。

 詳細が報道されることは少ないものの、Quadはこれまでサイバーセキュリティをはじめとするデジタル分野や気候変動などで協力を進めてきた。今次会合においても新たな取り組みが始まった。

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