パッチワーク的に規制リストを追加しているバイデン政権(写真:AP/アフロ)

 本連載では、激動の地政学動向において企業が取り組むべき「5つの指針」を示している。前回「地政学リスクはあらゆる企業の「自分事」に」では、「経済安全保障」にかかる規制が先端技術だけでなく、汎用品にまで広がっていることを述べた。

 今回は、指針2「変化し続ける「パッチワーク型」規制に対応する体制を構築せよ」について語る。

※【米中分断時代の経営論(1)】貿易摩擦から価値観の戦いにシフトした米中対立、経営者はいかに対応すべきか
※【米中分断時代の経営論(2)】誰もに降りかかる米中対立の火の粉、対象は先端技術の分野から汎用品まで拡大

(羽生田慶介:オウルズコンサルティンググループ 代表取締役CEO、オウルズコンサルティンググループ通商・経済安全保障支援チーム)

法務部を悩ませる「パッチワーク型」規制リスト

「もう法務部だけでは、通商ルールへの対応が間に合わない」

 2023年に入って、急速にこうした焦りの声が多く聞かれるようになった。理由の一つは、ごくシンプルに法務や貿易管理の部門が「忙しい」というもの。「遵守しなければいけない新たな規制が急に増えた」という背景によるものだ。規制対象の「リスト」という言葉だけでも大変に散らかってきた。

 練られたマスタープランに沿って順次、埋められていく表形式のリストであれば、先を見越した企業対応もできるだろう。だが、いま乱立しつつある「リスト」は、計画的に作られたものではない。

「ある製品・システムによる情報漏洩が見つかった」として特定の企業との取引に急遽狙いを定めたリスト、それに対立する国家による「そちらがそういう態度なら」として応酬するリスト、そして今度は企業を対象とするのではなくリスクの高い技術や個人名を列挙したリスト――など、「いまこれが大事だから」という一念で急ごしらえされた、まさに「パッチワーク」のような政策プロセスとなっているのだ。

 具体的に挙げよう。米国の規制だけでも「エンティティ・リスト」「SDNリスト」「未検証ユーザーリスト」など多くの「リスト」がある。