国連とはどのような組織で、どのような形で世界に影響を与えているのか。戦争を止めることのできない国連に存在意義はあるのか。日本は国連にどのように関わるべきなのか──。
知っているようであまり知らない、外からは見えにくい国連という組織について、外務省やシンクタンク、国連職員など様々な立場から外交に関わってきた水田愼一氏と、官民のルール形成や人権・サステナビリティの分野で独自のポジションを築いているオウルズコンサルティンググループの羽生田慶介CEOが語り合う対談の第3回。
※肩書は本対談を実施した2023年8月時点。水田氏は外務省、シンクタンクに勤務した後、2011年から2020年まで国連職員としてアフガニスタン、ソマリア、リベリアに勤務。2020年から2023年7月までニューヨークの国連日本政府代表部勤務。2023年9月から再び国連職員としてアフガニスタンで勤務
◎第1回「『国連の存在意義って!?』そう思っている日本人に知ってほしい国連の役割」
◎第2回「安保理改革の実現は困難も、常任理事国の拒否権行使に制限をかけることは可能」
「日本では、たいていのことがこの30年で停滞している」
羽生田慶介氏(以下、羽生田):最近、国際的なランキングにおける日本の順位が話題になることが増えています。
例えば、世界経済フォーラム(WEF)が発表したジェンダーギャップ指数を見ると、日本は146カ国中125位。とりわけ政治分野は低く、146カ国中138位と最下位クラスでした。西アフリカの最貧国として知られるシエラレオネ以下です。
もっとも、日本は決して革新的な国ではありませんが、世界の中でもかなり平和な国で、客観的に見て、人権が軽視されているような国ではないように思います。
日本のインテリ層は、こういったグローバルランキングを見て、「日本はここがダメだ」「あそこが弱い」などと批判する風潮がありますが、国際社会から見た印象はいかがでしょうか。本当に日本の状況はまずいのか、それとも過度に批判されているだけなのか、その点はどう思いますか?
水田愼一氏(以下、水田):もちろん、日本は平和で住みやすい国ですが、女性の社会進出にフォーカスすれば、やはり遅れていると言わざるを得ないのではないでしょうか。
例えば、名前が挙がったシエラレオネは国民の多くが絶対的貧困に置かれている国ですが、女性の政治参加という面では日本よりも進んでいます。シエラレオネに限らず、アフリカの多くの国は女性の議員比率が日本よりも高い。
日本と他国を比べることも重要です。でも、それよりも大切なのは、何をもって遅れているのかを考えるときに、それぞれの国が過去の実績と比べて前進しているのかどうかという観点で見ることだと思います。過去からどれだけよくなったのかという視点です。
日本には進んでいる部分もあれば、遅れている部分もありますが、たいていのことが、この30年間で停滞しているように感じています。
羽生田:過去との比較で前進していないということは、つまり遅れている。
水田:そう思います。では、どういうアプローチで前進させていくかという点ですが、ジェンダーギャップに関して言えば、賛否両論はあると思いますが、クオータ制のような形から入るアプローチが必要だと感じています。