ロシアのドローン。日本製のカメラやエンジンが搭載されている可能性があると指摘されている(提供:MOD Russia/Russian Look/アフロ)
  • 原材料の調達などサプライチェーンの「川上」では人権を尊重した調達を意識する企業が増えつつあるが、製品やサービスの販売後について意識している企業はそれほど多くない。
  • 最近ではこうした「川下」の人権リスクにも厳しい目が注がれており、2011年に国連で採択された「ビジネスと人権に関する指導原則」に沿った対応が求められている。
  • サプライチェーンではなくバリューチェーン全体で捉える必要があるビジネスにおける人権尊重。企業はどのように対応すればいいのだろうか。

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(石井麻梨:オウルズコンサルティンググループ・マネジャー)

 2022年、政府が「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定し、日本企業でも人権尊重の取り組みが進んでいる。最近では、自社内での人権侵害リスクに対応するだけでなく、原材料等の調達元などサプライチェーンの「川上」にあたる取引先にも人権尊重を求める企業が増えている。

 一方、企業の製品が販売先を通してウイグル人の弾圧やロシアによるウクライナへの軍事侵攻等に用いられているとして、販売元の企業が批判されるケースも出てきている。

 製品・サービスの販売先、つまりサプライチェーンの「川下」で懸念されるこうした人権リスクにどう対応すべきか、頭を悩ませるビジネスパーソンも多いのではないか。そこで、本稿では「販売先での人権リスク」を巡る動向、国内外のルールの考え方、企業に求められる具体的なアクションについて解説する。

置き去りにされる「川下」の人権リスク

 近年、企業に「ビジネスにおける人権尊重」への取り組みを求める動きが加速している。

 2011年に国連で採択された「ビジネスと人権に関する指導原則」(以下、国連指導原則)はあらゆる企業に「人権を尊重する責任」が適用されることを初めて明言した。

 その後、欧米を中心に人権デュー・ディリジェンス(事業を通じて及ぼしうる人権への悪影響を特定し、防止・軽減するための取り組み)を義務付ける法律の整備が次々と進んだ。

 遅れをとっていると言われていた日本政府も、2022年には「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定し、いよいよ本腰を入れ始めた。

 日本でも人権尊重の取り組みに力を入れる企業が増えている。