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バイデン政権屈指のロシア通といわれるオースティン国防長官(右)とゼレンスキー大統領(左)の会談は事前の予告なく行われた(2023年11月20日、写真:ABACA/共同通信イメージズ)バイデン政権屈指のロシア通といわれるオースティン国防長官(右)とゼレンスキー大統領(左)の会談は事前の予告なく行われた(2023年11月20日、写真:ABACA/共同通信イメージズ)

(文:名越健郎)

「支援疲れ」に中東情勢の緊迫も加わり、ロシア・ウクライナ戦争をめぐる欧米メディアの報道に潮目の変化が起きている。ウクライナ軍の反転攻勢の失敗や兵員不足に多くが言及、バイデン政権の対応にも批判が集まる。現状でロシア側が占領地域を手放すことは考えにくい。このまま停戦交渉に向かった場合、ウクライナが領土割譲という苦渋の選択を強いられるとの見方が台頭している。

 ロシア軍の全面侵攻から1年9カ月を経たロシア・ウクライナ戦争は、ここへ来て潮目が変わりつつある。

 ウクライナ軍の反転攻勢は成果を得られず、政権内の亀裂が伝えられる一方で、ロシアは長期戦に持ち込み、兵力を増員しながら有利に展開している。

 イスラエル・ハマス戦争も、欧米諸国のウクライナ支援に影を落とした。

 欧米側がウォロディミル・ゼレンスキー政権に対し、和平交渉の検討を打診したとも報じられた。ゼレンスキー政権は依然徹底抗戦の構えだが、今後、停戦の動きが浮上する可能性も出てきた。

「力による現状変更は許されない」(岸田文雄首相)としてウクライナ支援を続けた西側諸国にとって、憂鬱な展開となりかねない。

「反攻は失敗、突破口なし」

 10月末以降、ウクライナ側の「不都合な真実」(米誌『タイム』)を伝える欧米の報道が相次いでいる。

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