F-16の供与が不可欠になってきた(写真はフレアーを投下したF-16、2019年6月6日撮影、米空軍のサイトより)

 ウクライナ軍の6月からの反転攻勢の進捗は、予想よりも早くない。

 現在では、全般的に見て概ね膠着している。戦線によっては、わずかながら進展しているところもある。

 予想に比べ進展しないのは、ロシア軍の防御の障害の多さ、地形を利用した守りの固さ、損害を厭わない戦法などが理由に挙げられる。

 これらに加えて、ロシア空軍が6月ウクライナ軍の反転攻勢前の5月から、空爆の重点を都市から戦場に変更したことも重大な理由である。

 今回は、その空爆への変更について、ロシア軍の空爆状況、ウクライナ軍の防空、「F-16」戦闘機が供与された場合の航空戦闘と空爆推移、そして、ウクライナ軍の攻撃進展の可能性を分析し、考察する。

1.5月までに当初保有火砲100%損耗

 ロシア地上軍は、火砲等(榴弾砲・迫撃砲・多連装砲)を侵攻当初には、約3840門(ミリタリーバランス2021年版)を保有していた。

 戦闘開始から15か月(2023年5月)を過ぎ、3900門の損害を受けた。損害が当初の保有数を超えたのだ。

 その後、20か月後までに、これまでの月間損失の平均値(260門)の2~3倍を超える損失を出した。

 この間、保管していた火砲を整備し、ロシアの友好国などから買い戻しするなどして、増加補給しているが、次から次へと損害を出している。

表1 ロシア軍火砲等の損失推移

(図が正しく表示されない場合にはオリジナルサイトでお読みください)

 ロシア軍としては、前線で戦う歩兵部隊を砲兵の射撃(火力支援)によって支援しなければ、歩兵の損失が多くなってしまう。

 ウクライナ軍の歩兵、火砲および対戦車兵器を火砲で射撃して叩かなければ、歩兵部隊は前進できない。

 そこで、侵攻当初には、大きな損害を出して行動が低調であったロシア軍戦闘機の再登場となったのだ。