ウクライナで大活躍のHIMARS(高機動ロケット砲システム)。写真は2022年3月31日、フィリピンで米海兵隊と陸軍の共同訓練(米海兵隊のサイトより)

 今後の戦況に重大な影響を及ぼす戦いが今、行われている。

 この戦闘の焦点は、南部戦線ザポリージャ州西部でのウクライナ地上軍の攻撃と東部戦線ドネツク州アウディウカでのロシア地上軍の攻撃だ。

 ウクライナ軍が大規模部隊(数個海兵旅団)規模以上の部隊を投入して、へルソンを流れるドニエプル川を渡河するかどうかも注目するところである。

 ウクライナ軍のアウディウカ要塞に対するロシア軍の無謀な攻撃とその失敗は、南部戦線の作戦に重大な影響を及ぼすことになるだろう。

 今回は、東部戦線アウディウカでの戦闘について考察する。

1.アウディウカ要塞の存在価値

 ウクライナ軍のアウディウカ要塞は、ロシア軍が2022年2月24日に侵攻を開始してから一度も破られていない。

 ロシア軍は、アウディウカとバフムトを拠点とする防御ラインを突き破って前進できない限り、ドネツク州の境界まで進出できない。

 ウラジーミル・プーチン大統領は侵攻当日、「ドネツク共和国(ドネツク州)とルガンスク共和国(ルハンスク州)の要請に応えて、特別軍事作戦を実施する」と発表した。

 しかし、ロシア軍は現在でもプーチン氏が目標と定めたドネツク州の境界まで(約60キロの距離)進出できていない。

図1 両軍の占拠範囲とアウディウカの位置

出典:米国戦争研究所リポート(ISW)に、筆者が地名などを書き込んだもの(以下同じ)

(図が正しく表示されない場合にはオリジナルサイトでお読みください)