10月末までにトクマク攻略ができるかは、ATACMSの供与次第ともいえる(写真は2015年7月撮影、米陸軍のサイトより)

1.圧倒的優勢から劣勢に至った経緯

 ロシア軍は侵攻当初、圧倒的に優勢であった。

 ロシア軍の戦力は、ウクライナ軍に対して、戦車・歩兵戦闘車は4倍、装甲車は5倍、火砲は2倍、戦闘機は8倍、総じて、ロシア軍はウクライナ軍の約5倍の兵力であった。

 当時5倍という圧倒的に優位であった保有戦力のうち、特に地上軍兵器を見ると、今年の9月20日の段階で戦車等の残存率は30%、火砲は0%にまで損耗している。
 
 ロシア軍は、野外に保管していた地上軍兵器から、錆などによる損傷が少ないものを見つけ出して(それは全体の一部)、改修して前線に送っている。

 また、他国から輸入もしている。火砲の損耗が100%に達しているにもかかわらず、現在、火砲の射撃が実施できるのは、このためである。

 ロシア軍は今、この残存している兵器でしか戦えない。そのため、防御戦闘に移らざるを得なかったのである。

 一方、当初劣勢であったウクライナ軍は損害を出してはいるが、米欧からロシア軍よりも優れた兵器を供与され、その数量は十分とはいえないものの、戦力はアップしている。

 このことを考慮して、ロボティネからトクマクあるいはその到達ラインまでの戦いを考察する。