翌日の早朝から地雷撤去作業が始められた。約20人のカンボジア人ディマイナー(地雷撤去員)が、ヘイルトラスト(イギリスの地雷撤去NGO)の簡単な説明を受けた後、それぞれの担当区域に向かう。

 厚い防護服で身を包み、重いヘルメットを被っている。私も同じ装備で彼らの一人に同行したが、少し歩いただけでもたちまち全身から汗が吹き出した。

 現場にはロープが張られ赤いドクロのマークが危険を知らせていた。

毛が逆立つほどの緊張感の中での作業

 作業が始まった。先ず探知機を地面すれすれまで近づけて反応をうかがう。暫くして彼が地面を指さしながらこちらを見た。そして探知機をそっと脇に置き、地面を這うような姿勢になると腰から長いナイフを取り出し、そっと土に刺しては首を傾げまた刺しては首を傾げを繰り返し始めた。

 それは毛が逆立つような一秒一秒を感じる時間だった。

35℃の猛暑の中、探知機で地雷探知をするカンボジア人ディマイナー。孤独と暑さと緊張の連続だ(写真:橋本 昇)35℃の猛暑の中、探知機で地雷探知をするカンボジア人ディマイナー。孤独と暑さと緊張の連続だ(写真:橋本 昇)
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 どれくらいの時間が過ぎたのだろう、やがてナイフが地雷を感じたのか彼は顔を近づけて中を覗き込むと手で丁寧に周りの土を除き始めた。

 暫くして丸い地雷が地面に顔を出した。彼はさらに顔を近づけると針に糸を通すような集中度で信管を抜いた。こうして地雷はただの火薬の塊になった。

信管を抜かれた地雷は遠隔操作で爆発処理される(写真:橋本 昇)信管を抜かれた地雷は遠隔操作で爆発処理される(写真:橋本 昇)
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 彼らの仕事はまさしく命懸けだ。それだけに一日の作業が終わって宿舎に戻ると呆けたように弾ける。

 私も一緒にテレビを見ながらゲラゲラ笑い、アヒルの蒸し焼きをむしり食った。

「世界中の地雷を片付けに行くぞ」と誰かが声を上げた。