加えて、ファーウェイは、中国内の重大な人権侵害に加担していると欧米諸国から批判されている。というのも、民族を弾圧しているとして世界中で批判が出ている新疆ウイグル自治区でも、監視システムを提供していると報じられているからだ。それも、ファーウェイ製品を忌避する一因となっている。

今年6月に中国・上海で開催されたモバイル・ワールド・コングレスで講演するファーウェイの輪番会長兼CFOである孟晩舟氏。2018年12月にアメリカの要請により、カナダ・バンクーバー空港で逮捕され、21年9月まで中国に帰国できなかった(写真:ロイター/アフロ)

日本はファーウェイ製品を公式に禁止してはいなかった

 実はファーウェイの公式サイト(https://www.huawei.com/jp/facts)の「Facts」を見ると、「ファーウェイは日本の5Gネットワーク構築から排除されているのですか?」という質問に、「日本政府が発表した調達ガイドラインは、特定の国や会社について詳細を述べたものではありません」と書いている。

 つまり、これまでの国内外の発表報道とは異なり、日本ではファーウェイの導入を禁じていないことになる。そして今回、その実態の一部が判明した。

 ただ冒頭で触れた通り、多くのメディア記事や政府関係者、セキュリティ関係者などによってファーウェイの機器から情報が抜かれる可能性は繰り返し指摘されている。筆者の欧米企業のセキュリティ担当者への取材でも、ファーウェイ機器からデータが不正送信されているのを確認したと聞いている。

 もちろんファーウェイ側はこうした疑惑に対しては否定している。

 ただ繰り返すが、これはファーウェイ側の問題ではない。機器の調達を行う日本政府の問題だと言える。そして今後、ファーウェイ排除を進めるアメリカなどと共同でビジネスなどを行う際には、こうした事実が安全保障上の脅威としてビジネスを妨げる可能性もある。日本政府は今一度、日本の立ち位置をきちんと示す必要がありそうだ。