(譚 璐美:作家)
米国ワシントンの連邦最高裁判所は6月29日、米ハーバード大学が入試選抜で人種による優遇措置を講じる「アファーマティブ・アクション」制度を採用しているのは「違憲」だとする判断を下した。
今回の訴訟でハーバード大学を訴えたのは、アジア系アメリカ人の学生団体「公平な入学者選抜を求める学生たち」(SFFA)で、「ハーバード大学の入試でアジア系が差別され、本来より合格者が抑えられている」として、同時にノースカロライナ大学をも訴えていた。SFFAの主張では、大学側の不当な「人種バランス調整」によって、黒人やヒスパニック系の合格率が高まる分、アジア系の合格率が低くなっているのは「アジア系への差別だ」とした。
これに対して、ハーバード大学は、「選考要素のひとつに人種を考慮することは、多様性を実現する教育的使命の一環である。学業や課外活動、才能、人格、社会的・経済的背景や人種などを総合的に評価するものであり、アジア人を差別していない」と反論していた。
これまで「合憲」とされてきた制度に「違憲判決」
ちなみに学生新聞「ハーバード・クリムゾン」によると、2027年に卒業を予定する学生の人種別内訳は白人が40.8%、アジア系が29.9%、黒人・アフリカ系が15.3%、ラテンアメリカ系が11.3%である。
アファーマティブ・アクション制度については、これまでも「白人への逆差別」や「アジア人への差別」だと考える個人や団体が、いくつかの大学に対して訴訟を起こしたが、いずれも「合憲」だと判断されてきた。
今回、ハーバード大学を訴えたSFFAの場合も、2019年に連邦地裁に提訴して「合憲」の判決が下り、連邦控訴裁でも「合憲」とされていた。それを不服としてSFFATは最高裁に上告したのだが、ついにそこで連邦地裁、連邦控訴裁の判断が覆ったというわけだ。実は連邦最高裁は、トランプ政権時代にアファーマティブ・アクション制度に反対する保守派の判事が多数派となっていた。その影響が大きかったことは間違いない。
だがこの連邦最高裁の判決により、米国社会には大きな波紋が広がっている。