(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

反スパイ法が規定する「スパイ行為」とは

 中国でスパイ行為の摘発対象を広げる改正「反スパイ法」が、7月1日に施行された。

 これまではスパイ行為を「国家の機密や情報」の提供とされていたものが、「国家の安全と利益に関わる文書やデータ、資料、物品」の提供や盗み出し、買収にまで対象が拡大される。

 しかし、そもそも2014年に制定された「反スパイ法」のスパイ行為の定義そのものが曖昧と指摘されていた。

 今年3月には北京で、アステラス製薬の50代の日本人男性が「反スパイ法」に違反した容疑で拘束されているが、いったいなにがスパイ行為に当たるのか、中国側は明らかにしないまま、いまだに拘束が続く。

 その曖昧さがさらに広がるのだから、日本を含めた現地の外国人、外国企業は警戒を強めざるを得ない。いったい、どの文書やデータまでが摘発の対象となるのか。これまで通常のビジネスとして認められていたものが突如として違法となる、あるいは、意図的に決めつけてくる可能性だって否定できない。