7月2日日曜日、ウクライナのドネツク州バフムトの前線付近​​で、122mm迫撃砲弾を肩にかつぐウクライナ軍の第3独立強襲旅団の兵士(写真:AP/アフロ)

(国際ジャーナリスト・木村正人)

戦前人口の4分の1が故郷を追われたまま

 ウクライナのハンナ・マリャル国防次官は7月3日、バフムートなどドネツク州の東部戦線で1週間に9平方キロメートルを奪い返したと発表した。ザポリージャ州の南部戦線では28.4キロメートルを奪還し、解放された総面積は158.4平方キロメートルだ。

 だがロシア軍はクリミア半島を含め約8万6400平方キロメートルを占領している。反攻の道はまだ遠い。

 英国防情報部は3日、次のようにツイートした。

「昨年7月以降、ウクライナ当局は緊急事態法に基づき、ドネツク州、北東部ハルキウ州、南部ヘルソン州のウクライナが支配する戦闘地域から市民13万9000人を避難させた。国連推計では630万人が難民として国外に逃れ、500万人以上が国内避難民となっている。戦前の人口4400万人の4分の1が故郷を追われたままだ」

 6月4日に満を持して始まったウクライナ軍の反攻で「プーチンの料理番」ことロシアの民間軍事会社ワグネルグループ創設者エフゲニー・プリゴジンの反乱で、ウラジーミル・プーチン露大統領の足元はぐらつく。しかしロシア軍は前線に対戦車溝を掘り、無数の地雷を埋め、ウクライナ軍の反攻に備えてきた。最大の支援国・米国は反攻1カ月をどう見たのか。

 米中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ長官は1日、英ディッチリー財団で講演し、こう語った。

「今日、国際秩序への最も深刻な地政学的挑戦はプーチンの本格的なウクライナ侵攻だ。ウィンストン・チャーチルがディッチリーの寝室でフランクリン・ルーズベルトに戦時中のメッセージを口述筆記した時以来、欧州で最大の戦争だ」