(福島 香織:ジャーナリスト)
中国の「反スパイ法」が新しくなって7月1日から施行されることになった。2014年にすでに施行されていた反スパイ法が、なぜ今修正されてパワーアップすることになったのか。習近平はこの改正反スパイ法を使って何を目論んでいるのか、を考えてみたい。
全人代常務委員会法工委員会刑法室主任の王愛立の説明によれば、現行の反スパイ法は、もともと1993年に制定された国家安全法に含まれる“国家安全機関が履行するスパイ取り締まりに関わる職責”を規定したものだ。
2014年11月1日に反スパイ法として可決され、施行された。反スパイ法は国家安全法を基礎にして、スパイ取り締まり活動の規範や実施内容、スパイ取り締まり活動に対する国民の権利と義務などを定めた法律であり、国家安全を擁護維持するための重要な影響力を発揮する、という。
取り締まり対象範囲を大きく拡大
今回、2014年に反スパイ法が制定されて以降初めてその条文が修正され、スパイ行為の定義について一層詳しく改定され、その取り締まり方法も強化された。
具体的には、反スパイ法制定の目的について、国家安全を守るということに加えて、「人民の利益を守る」ことが追加され、「総体的国家安全」を堅持し、国家安全のための「人民防衛線」を構築することが打ち出された。
「総体的国家安全」とは、政治、経済、 文化、科学技術、資源エネルギーなどを含む幅広い領域における国家安全保障を目指す政策、概念を意味し、非常に幅広い分野でスパイが摘発されることになった。そして、こうした幅広いスパイ行為を「人民防衛線」という形で大衆動員をかけて取り締まろうというわけだ。