(福島 香織:ジャーナリスト)

 世界の新興国、途上国で、中国と貿易する際に中間貿易通貨としての米ドル使用を放棄し、人民元決済を導入する国がじわじわ増えている。3月以降、ブラジル、アルゼンチン、シリアなどが次々と人民元決済を導入すると発表した。

 これを人民元の国際化が進んだと受け取るかどうかは意見の分かれるところだが、米国で銀行破綻が続く中で、人民元の受動的な上昇を招き、短期的にはその価値が上がっているという見方もある。果たして、人民元がドルにとって代わる日はくるのか。

シリア、アルゼンチン、ブラジルが人民元決済を推進

 4月29日、シリアのアサド大統領は中国から派遣された翟隽特使と会見し、貿易決済の人民元使用を推進することに賛同を示した。

 アサドは「世界は政治、経済において、中国が新たなグローバル情勢のバランサーとなることを求めており、同時に中ロ関係やBRICsの枠組みなどが新たな多極的な国際秩序を建設する強大な空間を作るだろうと考えている」と述べた。

 アサドは米中の対抗がまず経済から始まり、これが貿易でドルを使わない必要性をますます大きくしている、と指摘。BRICs国家はドル脱却において主導的な影響力を発揮し、国際貿易において人民元採用を選択していることに言及。さらに中国の経済圏構想「一帯一路」の重要性や、サウジアラビアとイランの関係改善への中国の努力、そのことによる中東地域全体へのポジティブな影響力を評価した。