次期日銀総裁に内定した植田和男氏は異次元緩和の手じまいという大仕事を任される(写真:ロイター/アフロ)

(市岡 繁男:相場研究家)

グローバル化終焉で物価上昇はまだ続く

 ウクライナ戦争から1年が経過しました。その帰趨については様々な見方があるが、明白になっているのは、世界が米国を中心とする西側諸国と、ロシア、中国を中心とする旧共産圏の2大ブロックに分断し始めたことです。

 先日、インドで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、ウクライナ戦争に関する文言を巡って中国、ロシアが反対し、共同声明を発表できなかったことはその象徴的な出来事だったと言えるでしょう。

 米国は、中国の先端技術へのアクセスを制限するなど、経済的な締め付けを強めています。英紙ファイナンシャル・タイムズ(FT)の記事によると、京セラの谷本秀夫社長は「中国から一部地域への輸出が難しくなっている」「中国で生産して海外に輸出するビジネスモデルはもはや成り立たない」とも語っています。

 コストの安いサプライチェーンよりも、リスクの少ない安定したサプライチェーンが重視されるようになり、過去30年以上にわたって広がってきたグローバリゼーションは終焉を迎えました。そんな構造変化が起きている以上、世界的な物価上昇はまだ始まったばかりなのです。

 こうした中、2022年秋以降、低下していた米長期金利は今年1月下旬から再び上昇し始めています。 市場のコンセンサスが、インフレの先行きは楽観できず、年内の利下げは時期尚早という方向に変わってきたからだと言われます。

 しかし、理由はそれだけでしょうか。