異次元緩和を続けてきた日本銀行。一挙手一投足への注目度は一層高まる(写真:つのだよしお/アフロ)

政府は4月8日で任期満了となる日本銀行の黒田東彦総裁の後任として、経済学者で元日銀審議委員の植田和男氏を充てる人事案を国会に提示した。新総裁の人選を巡っては昨年来、様々なニュースが流れてきたが、それに関連して「イールドカーブ・コントロール(YCC)」という言葉がよく聞かれるようになった。今回は、YCCとはどのようなことを指し、その行方が投資家の行動や我々の生活にどのような影響を与えるのについて整理したい。

(平山 賢一:東京海上アセットマネジメント チーフストラテジスト)

 現在、国債(債券)を大量に保有する機関投資家のファンドマネジャーや、日々売買を繰り返す債券ディーラーにとって最大関心事の一つは、日本銀行の総裁交代に際して、イールドカーブ・コントロール(Yield Curve Control)がどのように変更されるのかという点である。

 この通称YCCは、長短金利操作のことを意味する。マイナス金利と大規模な国債買い入れとの組み合わせで、短期金利だけでなく長期金利も含めた長短金利全体に影響を与えるものである。

 現在、日本銀行は、短期金利を▲0.1%というマイナス金利にして、長期金利(10年物国債金利)をゼロ%程度で推移するようにしている。長期金利の変動幅を「±0.5%程度」としているから、日本銀行は大量の国債を購入し、おおむね10年物国債金利が0.5%を上回らないように抑え込んでいるわけだ。

 債券市場参加者は、インフレ率の上昇や世界的な金利上昇を背景に、この金融市場の調節方針が変更もしくは撤廃されるのかを固唾を飲んで見守っている。

 一般的に、国債の取引額は巨額であるため、わずかな金利の変化でも売買損益には大きなインパクトがある。それだけに、日本だけでなく世界中の投機家も含めた債券市場参加者は、チャンスとばかり熱い視線を送っているのである。

 債券市場とは全く関係のない人々にとっても、住宅ローンの金利を左右することから話題に上るケースが増えているはず。短期金利が上昇すれば、変動金利の上昇により住宅ローンの金利分が増加することになり、長期金利が上昇すれば、これから固定金利で住宅ローンを組もうとしていた人々の支払金利が増加するからである。