(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)
支配的だった円高予想の今
2023年最初の本コラム「春にも終わる米FRBの利上げ、その後の為替市場で何が起きるか」において、筆者は2023年のドル/円相場に関し、基本シナリオと上下双方向のリスクを提示した。
その中で、「2023年のドル/円相場の見通しに関しては既に多様な意見が飛び交っているが、基本的に重要な前提は共有されている」とし、その前提の筆頭が「FRBの利上げは春で終わること」だと述べた。
その上で、仮にそうした前提が崩れて「春以降もFRBが利上げを持続する場合、そもそも1~3月期の押し目(円高・ドル安)は期待できまい」としている。
23年を支配する円高予想の多くが年内の早期利下げ観測に賭けている節があったが、後述するように、既に一部高官が+25bpsまで縮小させた利上げ幅の+50bpsへの再拡大を示唆する状況にあり、少なくとも本稿執筆時点で早期利下げの実現性は相当低い。
ちなみに、この点に関しても年初のコラムでは「実際、3~5月に利上げ停止の判断に至ったとしても、その頃に消費者物価指数(CPI)や個人消費支出(PCE)デフレーターがヘッドラインで2%台まで下がっているとは思えない。そうした状況で利下げの議論が盛り上がるはずがない」としていた。
もちろん、まだ2023年が始まって2カ月弱であり、確たる結論を述べる時期ではないが、年末年始ほど円高予想に勢いは感じられないと言える。
2月の為替市場では、奇しくもこうしたリスク想定がやや現実味を帯び始めているように見受けられる。