東京・お台場のフジテレビ本社(写真:Tanasut Chindasuthi /Shutterstock.com)

中居正広氏の女性トラブルに端を発するフジテレビ批判。1月27日に同社が開いた記者会見は10時間超えという異例の展開となり、メディアやジャーナリストのあり方にもさまざまな意見が出ている。過去にメディアが世間から激しい批判を浴びた事例として、1996年に起きたいわゆる「オウムビデオ問題」があった。TBSが「未放映インタビュー」をオウム真理教の幹部に見せたことが明らかとなり、それが教団を追及していた弁護士一家殺害の一因と指摘された問題だ。当時、TBSでキャスターを務め、現在はメディアリテラシーの訪問授業や企業研修に注力している下村健一氏は今回のフジテレビ問題をどうみているのか。前後編に分けてお届けする。(JBpress)

<前編から読む>
【フジテレビ10時間会見】「報道のヤツら、何様?」という反感を視聴者に与えたダメージは大きい

(下村 健一:元TBSキャスター、白鴎大学特任教授)

フジテレビ社員の皆さんに頑張ってもらいたいこと

 1996年、TBSは世間から厳しく非難される大逆風の中にいた。坂本堤弁護士一家3人がオウム真理教信者らに殺害される結果を招いた、いわゆる「オウムビデオ問題」という1989年の出来事が明らかになったためだった。

 7年も前のある日、本社から遠く離れた分室で、ごく数人のスタッフが起こした出来事。当然私を含むほとんどの社員にとっては完全に初耳の話で、何が何だかわからなかった。関係社員から徹底調査もせず当初世間に対して否定する発言をし、批判の火に油を注いでしまった経営陣に対する不信や憤りも激しかった。

 だが、犯した過ちが罪深すぎた。3人の命が奪われたという結果の重大さは、「自分達は何も知らなかったんだ」で済まされることでは到底なかった。

 我々は、坂本さんご一家に対する痛切な思いと、事件の発端を作った当該社員や迅速な対応を取らなかった上層部への怒りを胸にしまって、TBSとしての連帯責任からひたすら非難を受け続ける日々を送った。

オウム幹部にビデオテープを見せたことを認め、謝罪するTBSの磯崎洋三社長(左)=1996年3月25日(写真:共同通信社)

——そんな体験をした我々だからこそ、今かなり似た構図の渦中にいるフジテレビの一般社員の皆さんの気持ちは、それなりに想像ができると思う。その想像を踏まえて、お伝えしたい事が3つある。

 1つ目。生番組などで時々、局アナさんなどがフジの一社員としての個人的思いを吐露している場面を見かける。そんな時、「自分達も悔しい」とか「早く真相を明らかにして」といった、やや被害者意識の混じったようなコメントは吐くべきではないと思う。