29年前、僕らも声を大にしてそれを言いたくて仕方なかったから、もどかしい気持ちはすごくわかる。でも我々なんか比べ物にならないほど悔しい思いをした事件当事者さんがいるのだし、「明らかにして」ではなく「明らかにします」と当事者意識で誓うべきだから。

 実際、例えば報道部門にいると芸能部門の世界の事は普段は全くわからないけれど、でも同期入社の仲間の何人かはきっとそちらの分野にも行っていて、「事情を聞ける相手が誰もいない」ことはないはずだから。第三者委員会に丸投げしないで、できる事はやる自浄努力を惜しまないで。

他メディアからの取材拒否は自分の仕事の否定になる

 2つ目。おそらく今、フジ社員には「他メディアの取材に軽々に応えるな」といった類の色々な箝口令が敷かれていると思う。でもここで取材拒否をすることは、いつも人様にカメラやマイクを向けている自分たちの仕事を否定することになってしまうから、どうか拒否はしないでほしい。

 もちろん、被害女性のプライバシーに触れることや、憶測に基づくことは口走るべきでないけれど、それ以外の質問には精一杯誠実に答えてほしい。そしてまた、そうやって覚悟を決めて外の質問に答えている仲間がいても、他の社員は「皆が辛い思いに耐えて沈黙を守ってるのに、あいつだけペラペラ喋ってるよ」などと絶対に白眼視しないでほしい。

 私自身も、前述のTBSバッシングの最中、奇しくもフジテレビと週刊文春からコメントを求められ、腹を括って回答した。フジの路上直撃インタビューは翌朝の全国放送で流されたし、文春に至っては訊かれて喋った内容が「下村が手記を寄せた」という形に歪曲されてデカデカと載せられた。

 どちらも社内の少なからぬ仲間からスタンドプレーと反発されたけれど、それでも後悔はしていない。もしあのとき両社の回答を拒否していたら、自分はその後、人に対して取材活動など図々しくてできなくなっていただろうから。

 そして、3つ目。まだまだ大炎上が続いている真っ最中に無理言うな、と叱られそうだが、この焼け跡の更地に新しく何を建てるのか、復興計画を今すぐしっかり考え始めてほしい。本当に反省して生まれ変わるんだ、新しい企業文化を作るんだ、という決意を、言葉でなく番組という主戦場で示してほしい。