
ウクライナ危機が発生した2022年以降、上昇している食料価格。その伸びは、2023年秋以降は鈍化していたが、この半年で再加速している。食料価格高騰「第2波」の原因と今後について分析する。(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)
<食料価格は1970年代以来の高騰局面>
食料価格は、第1次オイルショックに見舞われた1970年代以来の高騰局面を迎えている。
ウクライナ危機が発生した2022年以降、消費者物価指数(CPI)の食料価格は明確に上昇しており、前年比伸び率は2023年9月に+9.0%を記録、1976年9月以来の高水準へ達した。振れの大きい生鮮食品を除く食料価格でみても、前年比伸び率は2023年5月から8月まで+9.2%を記録するなど、1975年10月以来の高水準へ達している。
ウクライナ危機後の食料価格高騰は、輸入コストの大幅上昇が主因だ。
ロシアやウクライナからの供給縮小が懸念され、原油や小麦など広範な商品市況が高騰した。また、資源高で生じたインフレを抑制するために世界の中央銀行が金融引き締めを実施する中、当時は日本銀行が金融緩和を継続していたため、金融政策格差の拡大が意識され、円安の進行が重なった。
その結果、輸入物価指数は2022年9月に前年比+49.5%と大幅に上昇。オイルショック時に8割前後を記録して以来となる輸入コストの大幅上昇が生じ、そのコストアップを食料価格に転嫁する動きが広がったのだ。
<ここ半年で食料価格高騰の「第2波」到来>
その後、2023年秋以降はCPI食料価格の伸びは鈍化傾向を辿った。価格高騰の影響で食品に対する需要が低迷したほか、輸入コストを転嫁する動きがいったん鈍ったとみられる。
だが、2024年後半以降のここ半年ほどで、食料価格の伸びは再加速しており、いわば価格高騰の「第2波」が到来している。
食料価格の前年比伸び率は2024年7月の+2.9%を底として明確に反発、12月に+6.4%まで拡大した。生鮮食品を除く食料価格でみても、前年比伸び率は2024年7月の+2.6%を底として12月に+4.4%まで戻っている。
「第2波」到来の一因は、2024年に入ってからの円安再進行であろうが、他の要因も重なっているとみられる。以下、食料価格の内訳の動向から、「第1波」と「第2波」の違いを整理してみる。